横浜駅から徒歩5分の場所で、AHA-BLS-HCP、PEARS、ファーストエイド講習を開催しています。

開催日程詳細・お申し込みは ホームページ をご覧ください。

2016年05月31日

たった2%だから、子どもの蘇生法は不要?

心停止者の年齢区分
心肺機能停止傷病者の救命率等の状況」総務省消防庁救急企画室より


先日の日本蘇生科学シンポジウムでは、小児の心停止は2%未満で、ごくほんの一部にすぎないため、日本のガイドラインでは、大人の手順に吸収させたと言っていました。この点は前回のガイドラインから見直しはされませんでした。

最後に少し座長からのフォローが入りましたが、たった2%であっても、平均余命を掛けたら見過ごせない数字です。

公衆衛生として考えたら、最大公約数である大人の救命法を優先すべきというのはわかります。しかしCPRを学ぼうとする人は、日本国民の寿命統計を上げたいから学ぶわけではありません。目の前にいる人を救いたいのです。

ましてやそれが自分の子どもだったら……

子どもの特性を考慮した小児BLSは重要です。しかし、それを日本で学べる機会は減りました。

だからこそ、市民教育レベルでも、子どもの蘇生を大人の蘇生と明確に切り分けている米国蘇生ガイドラインの講習プログラムが注目されています。






posted by BLS横浜 at 19:30 | TrackBack(0) | 蘇生ガイドライン2015のBLS/ACLS/PEARS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年05月30日

「G2015時代のBLSインストラクターを目指す」ワークショップ in 久留米

昨日、九州久留米で開催した「G2015時代のBLSインストラクターを目指す」ワークショップは盛況のうちに終了しました。

昨日のワークショップでも話題になりましたが、G2015ではBLSにもデブリーフィングという概念が入ってきました。

ここで言うデブリーフィングは、インストラクターの指導法というだけではなく、学習者たちにデブリーフィングという自己学習・自己発展法を提示するという、より高次な概念まで含まれています。

この点は、G2010のACLSプロバイダーコースDVDの中でも示されていましたが、実臨床での救命処置の後で、チームで自らデブリーフィングを行うことでチームのパフォーマンスを向上させることが期待できます。

またシステム的な欠陥を明らかにするという効果もあります。

講習会場での研修と、real-life situationsをつなげるための手段としてのデブリーフィング。

教育工学上、有名なカークパトリックのレベル3以上を目指すことが正式に盛り込まれてきたG2015教材。これまでは講習会場でのパフォーマンス(レベル2)で良しとしてきたことからは、大きな飛躍です。




posted by BLS横浜 at 19:48 | TrackBack(0) | 蘇生ガイドライン2015のBLS/ACLS/PEARS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年05月27日

JRCガイドライン2015の「ファーストエイド」策定の内情

今日、博多で開かれた日本蘇生科学シンポジウム(J-ReSS)に参加してきました。

ガイドライン2015発表後、最初のJ-ReSSだけに、ガイドライン2015の解説というのがメインテーマ。JRC2015の各章の共同座長の方たちが、ガイドライン改訂のポイントを説明してくれました。

中でも注目したのは、最後のファーストエイドについてです。

J-ReSS 日本蘇生科学シンポジウム in 博多


ファーストエイドという項目は、JRCガイドラインとしては今回初めて登場した章立てです。

すこし事情は複雑なのですが、AHA&ARCガイドラインとしては以前からファーストエイドがありましたが、今回の2015からCoSTR(国際コンセンサス)に格上げとなり、それにともない、日本版ガイドラインにも入ってきた内容です。

BLS横浜としては、日本語化されるまえにG2005時代からAHAのファーストエイドコースを手がけていますので、すっかりお馴染みの内容ではあるのですが、日本の応急手当の常識からするとかなり過激な内容となっています。

エピペン注射、アスピリン投与、止血帯、薬剤剤配合の止血包帯など、医療資格を持っていない人に求めるにはあまりに高度な内容。

日本版ガイドラインになるときには、CoSTRの内容がどれだけ日本国内事情に合わせてアレンジされているのかと注目していましたが、そのほとんどは、CoSTRやAHAガイドラインと同じで、ホントにこれで大丈夫なの??? と、クェスチョンマークが3つ4つ並んでもおかしくないくらいの内容でした。

なにかの間違いじゃないかと思っていたのですが、今日、ファーストエイド担当者の話を聞いて大いに納得。

結論からいうと、日本版のファーストエイドガイドラインとしては、「整備する時間がなかったから、CoSTERの忠実な翻訳に徹した」というのが真相とのこと。

詳しい事情はわかりませんが、CoSTERのファーストエイドの内容をもとに、日本版ファーストエイドガイドラインを策定するための時間が4ヶ月しかなかったそうです。

まったく新しい内容でもあり、作成者もファーストエイド教育への造詣があったわけではないようで、今回は「CoSTRをできるだけ忠実に翻訳することを目標とした」(発表スライドより)という点が明かされました。

内容を練ることが出来なかったため、明らかに不適切な部分は削除し、日本の事情に合わない部分は注釈を加えることで、どうにか発表日に間に合わせた、というのが今回のJRCガイドライン2015のファーストエイドです。

そう言われれば、なんとか納得できるかもしれません。

前回のJRCガイドライン2010のドラフト版もそんな感じだったなと思い出す方も多いかもしれません。

BLSやALSとは違って、今回からスタートしたJRCファーストエイドガイドライン。次回、5年後には日本らしさも入った本当のファーストエイド元年になることを願います。





posted by BLS横浜 at 23:37 | TrackBack(0) | 蘇生ガイドライン2015のBLS/ACLS/PEARS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年05月23日

満足と自信につなげるBLS指導のポイント

G2015における「質の高いCPR」とは、下記のとおりです。

・強く押す(成人:少なくとも5cm、小児・乳児:少なくとも胸郭の1/3)
・速く押す(100〜120回/分)
・リコイル(もたれない)
・圧迫中断は最小限に(10秒以内)
・胸の上がりが見える人工呼吸を行う(1回1秒)
・過換気を避ける

これを技術として身につけさせるのがBLS講習の目標です。そして、コース中のどの場面で、どのポイントを指導するか、という教材設計がしっかりなされているのがAHA BLSコースです。

日頃インストラクターコースでお話している内容をすこしご紹介します。



AHA-BLSヘルスケアプロバイダーコース(G2010ならびにG2015暫定版)では、練習場面は下記のように進んでいきます。

1.胸骨圧迫(30回の圧迫を5サイクル)
2.気道確保+人工呼吸(ポケットマスクを使った換気2回を5セット)
3.胸骨圧迫+人工呼吸(30:2を5セット)
4.評価(反応確認・呼吸確認・脈拍確認を映像に合わせて練習)

それぞれの練習の前には、上記の質の高いCPRのポイントがすべてテロップで映しだされます。

しかし、まず最初の胸骨圧迫の練習で強調すべきは、3点だけです。

「強く、速く、しっかり戻す」

これだけに的を絞って指導を行います。

余計なことは言わないで、ポイントにフォーカスさせます、



次いで、人工呼吸の練習。ゴールとしてのポイントは3つありますが、順番が重要です。

1.胸が挙がる
2.入れ過ぎない(過換気を避ける)
3.1回1秒で、速すぎず遅すぎず

最初から過換気を避けることを強調してしまうと、手技に問題があって胸が上がらないのか、吹き込みの量が足りないのか、わからなくなってしまいます。

だから最初は、まずは胸が目で見て挙がることに重きをおいた指導を行います。明らかに吹き込み過ぎであっても、まずは胸が上がったことを認めて、褒めるべきです。そうして安定してできるようになってから、次のステップとして、過換気を避けることや1回1秒ということを追加指導していくとうまくいきます。



胸骨圧迫と人工呼吸を組み合わせた30:2の練習の時に強調すべきポイントはなんだと思いますか?

もちろん、強く、速く、を引き続き強調してもいいのですが、それはすでに前の練習で習得済みです。この胸骨圧迫と人工呼吸の組み合わせで初めて出てくるのが、「圧迫の中断を最小限に」という項目。

ここに着目させてから練習を行うべきです。

AHAコースの場合は、ビデオに合わせて練習しますので、ビデオのデモンストレーターが人工呼吸が終わって胸骨圧迫に戻ったら、あなたも途中でも圧迫に戻ってください、という点を伝えます。最初はうまく行かなくても5サイクルもやっていれば、自然と10秒以内で2回の人工呼吸ができるようになります。

もちろん、複合練習になっていますから、流れの中できちんと人工呼吸ができるのか、とか、質の高い胸骨圧迫ができているか、というところもポイントですが、そこに拘泥してしまうと、肝心の中断時間を10秒以内に留める練習ができなくなってしまいます。



このように、AHAの講習は、簡単な手技から段階的に習得していって、その組み合わせで自然とできるようになる、ということを狙って作られています。ですから、各ステップの学習目標を理解して、きちんとゴールに到達させてから先に進むことが肝要です。

AHAのBLSインストラクターは、その教材の意図を理解して、仕様のとおりに使うことによって最大のパフォーマンスが発揮できるようになっているのです。


成人学習の動機付けでARCSモデルというのがあります。受講者の注意を引き、関連性や学ぶことの妥当性を提示して、それから満足と自信を得られるように支援するというのがポイントです。

いきなりCPRの全体の流れをやらせても、あちこちで引っかかってうまくいくわけはありません。そこを一歩ずつ階段を登るように段階的に指導して、自信を持たせて、最後には、「できた!」という達成感に到達させるような指導方法。

それを私たちはAHA教材、特にコースDVDから学ぶことができます。



posted by BLS横浜 at 23:24 | TrackBack(0) | 蘇生ガイドライン2015のBLS/ACLS/PEARS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年05月08日

「G2015時代のBLSインストラクターを目指す」ワークショップ at 横浜

本日、横浜で開催した「G2015時代のBLSインストラクターを目指す」ワークショップには、4つのITCから15名の方がご参加いただき、終了しました。

ガイドライン改訂だけを見ると、AHA-BLSには大きな変更がないように見えます。しかし、プロバイダーコース教材を見ると、驚くほどの激変を遂げています。

キーワードはLife is Why。

Life is whyの謎を解け、という謎解き風(?)な展開での3時間でした。

結論から言ってしまうと、AHAガイドライン2015のEducationの章にも書かれているように、今回のガイドラインでは、インストラクショナル・デザインが全面に打ち出されており、カークパトリックのレベル3以上を目指す方向に転換されたということが大きいです。

learn and liveでは世の中、変わらなかった。

それはカークパトリックのレベル2の世界に限局した教育展開だったから。

ゆえに、シンプルさと教えやすさを犠牲にしてでも、リアルな世界とのつながりを作る必要があったわけです。それがLife is whyです。

技術習得のドメインでいうなら、認知スキルと運動スキルはAHAコースの十八番。

足りなかったのは態度スキルへのアプローチ。

それがリアルの追求と相まって、Life is whyに集約されたものと考えられます。

結論を書くと、こんなシンプルな話なのですが、それをG2015のBLSコース教材の映像を通して、またガイドライン変遷をたどりながら、考えていきました。

これだけ読んでも、いまいちピンとこないかもしれませんが、興味を持ってくださった方がいましたら、次回、5月29日(日)久留米での「G2015時代のBLSインストラクターを目指す」ワークショップへの参加をご検討いただけますと幸いです。





posted by BLS横浜 at 23:22 | TrackBack(0) | 蘇生ガイドライン2015のBLS/ACLS/PEARS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年05月05日

心停止認識の評価:反応確認であり、意識確認ではない点について

昨日、Twitter の上ですこし書いた点ですが、こちらにもシェアしておきます。

BLS手順において、「大丈夫ですか?」と尋ねながら確認するのはなにか?

それは「反応」の有無です。「意識」ではありません。

英語でいうなら、Responsiveであって、consciousnessではありません。

英語では、昔から、この単語が明確に使い分けられていますが、日本語になったときには、Responsive(反応)が意識と訳されてしまったり、成書では、反応と書かれているのに、指導員レベルで意識と言い換えられてしまうケースが散見します。


医療者レベルの理解でいけば、それほど大きな問題はないのかもしれませんが、市民向けのBLS指導ではこの違いをしっかり区別をした方がいいと思います。

医療の素養がない一般の人に、意識がないとはどういう状況か、と尋ねてみたら、どんな返事が返ってくるかを考えてみるとわかりやすいかもしれません。

例えば、「大丈夫ですか?」と呼びかけた時に、「うーん、、、」とかすかなうめき声をあげただけで、目を開かず、動かなかった、という場合、どうでしょうか? 意識なし、と判断する人が多いのではないでしょうか?
しかし、この状況はBLS手順で言った場合、「反応あり」であって、CPRは適応ではありません。

これが、反応でとらえた場合と、意識でとらえた場合の違いです。

医療者的に言ったら、JCS300以外はCPR適応外と判断できるかもしれませんが、そういうレベルの話ではなく、救命講習で教わった一般の方たちがどのように理解して、何をどうみて判断して、どう行動するか? という実質的な中身で考えるべきです。

ということで、絶対的な間違いとはいいませんが、CPR手順の中で「意識の確認」という言葉を使うのは不適切と考えます。

そこで、どのように指導すればよいのかという話になると、私たち指導員が「反応確認」という言葉を正しく使うことと、最初に、「反応」という言葉の概念を定義することが重要です。

先日、4月26日にリリースされた最新版の Heartsaver CPR AED Student Workbook の中では、その冒頭の3ページで下記のように定義されています。

You should know that during an emergency, it's possible that someone might become unresponsive. Here is how to decide if someone is responsive or unresponsive.

Responsive : Someone who is responsive will move, speak, blink, or otherwise react to you when you tap him and ask if he's OK.

Unresponsive : Someone who does not move, speak, blink, or otherwise react is unresponsive.

傷病者を軽く叩きつつ、大丈夫ですか? と声をかけたことに対する「反応」に着目します。その刺激に呼応して、動きや、発語、瞬きなどの目元の動き、その他の反応が見られた場合、「反応あり」つまり、心停止の兆候ではない、と考えます。

これを簡略化して「動きの有無」としてしまうと、正しくはありません。あくまでもこちらからの刺激に対する反応として動きがあるかどうか、です。

反応とは関係のない痙攣や死戦期呼吸のような「目的のない動き」を除外するためです。

疑わしければ胸を押せ、という原則からすれば、先ほど上げたようなケースで胸を押すということは間違いではありませんが、指導指針の中で、きちんと意識と反応を区別して、弁別の閾値が設定されているわけですから、少なくとも指導員レベルでは、この点はきちんと認識したいところですね。



posted by BLS横浜 at 06:25 | TrackBack(0) | 蘇生ガイドライン2015のBLS/ACLS/PEARS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする