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2017年07月22日

AEDが「ショックは不要です」というとき

心停止は大きく分けて2種類あります。

AEDの電気ショックが必要な心停止と、電気ショックが不要(有効でない)な心停止です。

これを判断してくれるのがAEDですから、心停止と認識したら、可能であればすべての症例でAEDは装着するべきです。

つまり、市民向けプロトコルでは、「反応なし+10秒以内に正常な呼吸であると確信できない場合」ですし、医療者向けで言ったら、「反応なし+呼吸なしor死戦期呼吸+脈なし」であれば、CPRを開始しつつ、AEDがあれば直ちに装着します。


AEDの電気ショックのことを専門用語では「除細動」といいます。文字通り、心臓の細かい動き(震え)を取り除くのがAEDです。

心臓が細かく震えている心室細動や(無脈性)心室頻拍を検出した場合に限り、「ショックが必要です。充電します」と言って、電気ショックが実行されるようになっています。

もう一方のタイプの心停止、つまり心停止の中でも心静止(心電図がピーッと一直線の場合)や、なんらかの原因で血圧が低すぎて有効な血流がない状態などの無脈性電気活動(PEA)と呼ばれるタイプの場合は、心停止の原因が心臓の震えではありませんから、当然、AEDは「ショック不要」と判断します。しかしこれも心停止なのです。

ショック不要=心停止じゃない(生きている)というわけではない点、注意して下さい。

AEDは心電図の解析しかできませんから、生きているか心停止かの判断は人間が行わなければならない「仕様」になっています。

そのためAEDを装着する条件が規定されているわけです。


※市民向け: 「反応なし+呼吸なし」
※医療者向け: 「反応なし+呼吸なし+脈なし」


この点は、AEDの取扱説明書(添付文書)で規定されていますし、救命講習でもきちんと教える必要がある部分です。





「反応なし+呼吸なし」ということで、心停止と判断して、AEDを装着して解析させた結果、「ショックは不要です」と言われたのであれば、それは電気ショックが有効ではないタイプの心停止だということです。

この場合、除細動(AED)では救えないということですから、できることと言えば、救急車が到着するまでの間、できるだけ「質の高い」心肺蘇生法を継続することです。

目の前で卒倒した突然の心停止(心原性心停止疑い)の場合以外は、体の中の酸素が枯渇している状態ですから、もし人工呼吸をまだ開始していないのであれば、なんとか感染防護具を手に入れる努力をして、人工呼吸を始めるべき、といえるでしょう。





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2017年07月21日

溺水の救命のポイントは人工呼吸

「プールで男児溺れる 監視員が救出、搬送 千葉公園」(千葉日報2017年7月21日付)


プールで男児溺れる 監視員が救出、搬送 千葉公園



プールの底から引き上げたら、意識なし、呼吸なし。人工呼吸をしたら自発呼吸が戻ったというニュース。

AHAの小児の救命の連鎖が示しているように、子どもの救命のための最大の武器はCPR(人工呼吸+胸骨圧迫)です。

喉頭痙攣による呼吸停止だったのか、低酸素による徐脈性PEA(無脈性電気活動)だったのかはわかりませんが、手早く人工呼吸に着手できたのが救命のポイントだったのではないでしょうか?

BLSの原則からすればAEDがあればただちに装着すべきですが、それと同じかそれ以上に、子どもや水辺の救命では人工呼吸が重要です。

心室細動に代表されるような心原性心停止であれば、AEDがなければ救命はほぼ絶望的ですが、呼吸原性心停止の可能性があれば人工呼吸+胸骨圧迫だけでも救える可能性があります。

AEDが「ショックは不要です」と判断したら、呼吸原性心停止の可能性が考えられますから、今どきの Hands only CPR の概念から切り替えて、人工呼吸の実施も積極的に考えていきたいものです。





posted by BLS横浜 at 23:04 | TrackBack(0) | PEARS/PALS (小児救急・急変対応) | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年07月17日

山渓ウィルダネスファーストエイド記事の問題

昨日は、アウトドア雑誌Garvyに掲載された「ウィルダネス・リスクマネジメント・カンファレンス」のレポートを紹介しましたが、山岳雑誌「山と渓谷」でも同じ話題が載っていました。

山と渓谷社 ウィルダネス・ファーストエイド記事


ウィルダネス・ファーストエイドの医行為に関するシンポジウムの下りは下記のようにまとめられていました。

「山岳事故の法的課題などに詳しい弁護士の溝手康史さんは緊急事態下では『医療行為』に該当する応急処置を一般人が行っても医師法には反しないとの原則を説明した上で、『ガイドなどは職務上の注意義務があるが、本来なすべき処置を行っていれば、責任を問われることはない』として、対応を恐れないように呼びかけた。」

(山と渓谷, 2017年8月号, p.187)



1ページだけの簡単な記事で、非常に簡略化されている印象ですが、前後の文脈はなく、当該部分はこれだけです。

昨日のGarvy誌の掲載内容についての記事をご覧頂いた方は、お気づきと思いますが、主たるメッセージがまったく違います。ほぼ正反対に近い印象を受けるのではないでしょうか?

山と渓谷誌の記事:
一般人が行う医療行為は医師法には反しない → 本来なすべき処置を行えば責任は問われない → 恐れるな

Garvy誌の記事:
一般的なファーストエイドを緊急時対応として行うことは問題ない → ウィルダネス・ファーストエイド(医行為を含む)は万が一の場合は傷害罪になる → 今後の課題


山と渓谷誌の記事では、先のカンファレンスでの展開と同様、ファーストエイドと医行為の関係性が明確になっておらず、日本の既存概念の応急処置と北米のウィルダネス・ファーストエイドの違いが混沌としています。

一般人が医療行為を行ったとしても「反復継続の意志」がなければ医師法違反を問われないのはよく知られた既知の内容です。

しかし、日本の一般的な応急手当の概念では、医行為は行わない、教えないことになっており、応急手当に医行為が入るのはありえないことです。

ですから、本来なすべき処置 ではない 医行為を行っている以上、2番目の「本来なすべき処置を行えば責任は問われない」という文脈の意味が通りません。本来はなすべき立場にない人(医師免許を持たない人)が行う行為なわけですから。

短い文脈の中でも論理が破綻しており、結局何をいいたいのかわからず、そこに残るのは「恐れるな」という、根拠性のない空虚なメッセージだけです。

・医師法の問題
・刑法の問題(傷害の罪と緊急避難)
・ガイド等の注意義務

シンポジウムで話されていたこの3点が混在となって意味不明な一文になってしまっています。

なにより、医師法違反は問われないとしても、傷害の罪を問われる可能性があるという弁護士の重要な発言部分がまったく触れられていないのは、恣意的なものか、大きな問題と考えます。

字数制限ゆえの「舌っ足らずさ」なのかもしれませんが、非常に重要な部分だけに配慮と責任が感じられず、あまりに残念です。

無駄に大きい写真の意味が気になるばかりです。



posted by BLS横浜 at 12:49 | TrackBack(0) | ウィルダネス・ファーストエイド | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2017年07月16日

ウィルダネスファーストエイドの医行為は傷害罪?

2017年に6月16日にお台場で開催された ウィルダネス・リスク・マネジメント・カンファレンス の様子が、アウトドア雑誌Garvyに掲載されました。

Garvy 野外救急法の最前線 ウィルダネスファーストエイドの危険性


このカンファレンスに関しては、医療や法律に明るくないアウトドア専門家たちをミスリードする危険をはらんでいたことは以前にブログでも書かせていただきました。



カンファレンスには、メディア関係者も来ていたため、どのように報じられるかを懸念していましたが、Garvy誌に関しては、きちんと正しく伝えてくれていたため、一安心。

どのような内容だったのかは、ぜひ Garvy誌2017年8月号 の106〜107ページを御覧いただきたいのですが、かいつまんで要点だけを確認し、補足をしておきます。



(ウィルダネス・ファーストエイドが)「一般的に知られる救急法と異なる点は、救急車が来ないようなウィルダネスエリアで、より高度な救急処置を行うことです。例えば、一般的には救急隊員が判断し、医師が処置するような頚椎保護の診断や、脱臼の整復深い創傷の洗浄や、注射の使用などがこのウィルダネス・ファーストエイドには含まれます」

(小清水哲郎:野外救急法の最前線, Garvy 2017年8月号, p.106, 実業之日本社)


記事の中では、まずは日本の一般的なファーストエイド(救急法)とウィルダネス・ファーストエイドの違いを明確にしていました。

この点は、先のカンファレンスではまったく言及されていなかったという問題点は以前に指摘したとおりです。

パネラーとして登壇した弁護士や医師が言及する「ファーストエイド」が日本の一般通念によるファーストエイドなのか、北米の特殊なウィルダネス・ファーストエイドなのかはっきりしないまま議論が進んでいたため、オーディエンスに誤解を与える問題点となっていました。


  • 日本の一般的なファーストエイド(日赤や消防で教える内容)……医療行為は含まれない
  • 北米発祥のウィルダネス・ファーストエイド……注射や脱臼整復などの医療行為を含む


まずは、この違いをきちんと区別して考えることが重要です。

それがウィルダネス・リスク・マネジメント・カンファレンスでは抜けていました。

その点、Garvy記事はきちんと補足してくれています。


その上で、法的な視点ということで次のようにまとめています。

「一般的なファーストエイドを緊急時対応として行うことは問題ないが、『ウィルダネス・ファーストエイドの場合は、実際の個々の案件による』とのこと。事例が多くなく、また判例もないことから、現時点では万が一の場合は『医師法違反にはならないが傷害罪になる』可能性がある、という話でした」

(小清水哲郎:野外救急法の最前線, Garvy 2017年8月号, p.107, 実業之日本社)


この部分ですが、前回のBLS横浜ブログ記事で書いたとおり、フロアからの質疑応答によって初めて言及された部分でした。つまり、たまたまの質問がなければ全くスルーされていた部分です。ここをきちんと拾ってくれた記者の方には感謝です。

医師法違反が問われるのは、「反復継続の意志」を持って医行為を行った場合ですから、単発の偶発的な医療行為が医師法に抵触しないのは、AEDやエピペンの市民解禁ですでによく知られているとおりです。

しかし、医師以外が行う医行為は、その正当性を担保するものがありませんから、社会的相当性によって判断され、否となれば、人を傷つけたという傷害の罪が問われる可能性は十分にありえます。これは医師法とはまったく別の問題としてウィルダネス・ファーストエイド・プロバイダーの前に立ちはだかっているのです。

一般の方はあまり考える機会がないかもしれませんが、医療行為のほとんどは、目的や妥当性を誤れば、人を傷つける行為、傷害と紙一重です。

つい先日も、睡眠導入剤を飲み物に混ぜた(薬剤投与した)准看護師が傷害容疑で逮捕されたという事件が記憶にあたらしいところでしょう。

人に薬物を投与したり、針を刺すという行為は、基本的には傷害です。

しかし、高度に訓練を受けて免許を与えられた「医師」が医学的な妥当性をもって行うときに限り、その判断と行為が正当化されて、診断・治療という名前に変わるというのが法的なロジックです。

ここで3つのポイントがあります。

1.行った行為(処置:医行為)は正しく実施されたか?
2.行為を実施するという判断(診断)は妥当だったか?
3.実施者は、1と2を行うだけの訓練をされた人間であったか?

日本では、医学部に入学し6年間の教育を受け、医師免許を取得することで上記の1〜3が担保されるとみなされます。

つまり、傷害と医行為を区別するポイントは、一言で言えば「免許」です。

緊急避難ということで大目に見たとしても、「教育・訓練」が問題となるのは必至でしょう。

今は、判例がなく、なんとも言えませんが、今後は、この教育・訓練の妥当性が焦点となっていくはずです。

Garvy誌の記事の中で、「ウィルダネス・ファーストエイド講習に参加した医療者は、対処法に問題はないと考えています」「医師も学ぶ点が多いなど、好意的な話や」と言った一文があり、医学的な妥当性があることを示唆していますが、医学的に正しいことであっても、それをウィルダネス・ファーストエイドという国家資格とは無縁の外国の教育を受けることで、基礎知識のない一般人が、妥当な判断をできるように人材に育つのか、また技術の保証がされるのか、ということこそが問題です。

そこに関しては、カンファレンス中でも言及はされませんでしたし、記事にも書かれていません。

だからこそ、記事の結論として、「現時点での考え方は、従来からの現場課題であり、カンファレンスだけで問題解決する話ではありませんでした」としているのは妥当だと思います。

医学的正当性を検証するだけでは不十分です。教育的な妥当性も検証されなければならないのです。

「この先の良き前例の積み重ねによって、ウィルダネス・ファーストエイドへの理解と必要性を作り上げていくことの確認がなされました」

この当事者になる覚悟は重いです。

簡単にいえば、訴追される、裁判になるという覚悟です。

そうして、裁判や、社会問題として検討されていく積み重ねが、今後必要だということです。



次回は来年の6月に長野でウィルダネス・リスク・マネジメント・カンファレンスが開催される予定です。

このカンファレンス自体は、ファーストエイドに特化したものではなく、あくまでも野外リスクマネージメントという視座の中のひとつとして、今回たまたまファーストエイドが選ばれただけです。ですから、次回のテーマは、遭難かもしれませんし、落雷かもしれません。

しかし、今回、懸案だったウィルダネス・ファーストエイドの現状確認の第一歩が行われたわけですから、この先のウィルダネス・ファーストエイドの日本国内定着に向けての議論は、今後も続けていってほしい永代のテーマだと思っています。

WRM関係者ならびにすべてのWFA講習提供者の方たちには、この点、切にお願いしたいと思います。









posted by BLS横浜 at 01:04 | TrackBack(0) | ウィルダネス・ファーストエイド | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする