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2013年11月30日

僻地で求められる救急対応スキル ファースト・レスポンダー育成

今年の10月末に沖縄の離島でファーストエイド講習を開催させていただいたのですが、そこで感じたのは、島で求められているファーストエイドスキルは、都市部のそれとはまったく異なるという点でした。

西表島と小浜島の方から話を聞かせていただきましたが、両島には消防所轄の救急車はありません。救急隊もいません。

つまり119番通報しても、救急車は来てくれないのです。

119番通報をすると、行政機関の集中している石垣島につながり、必要ならそこから離島の診療所の医師に連絡がいくという体制。(実際のところ島民は119番は使わず、直接消防団長の携帯にかけるのが通例だそうです)

例えば、交通事故があった場合に、車から救出して診療所に運ぶのは誰かと言ったら、地元の消防団(消防職員ではなく)もしくは近所の住民。場合によっては医師が現場に来ることもあるといいますが、医師は一人しかいませんので、基本的には、地元の人の軽トラックや車で診療所に運び込むということになっているそうです。

日頃、横浜でファーストエイド講習を開催するときは、119番通報すれば10分程度で救急車が到着するというのが前提となっています。ですから、緊急通報を迅速に、かつ的確に行うことが最大の「ファーストエイド処置」となるわけですが、離島の住民にとっては違うのです。

そう考えると、離島の住民にとって標準的に必要なファースエイドは、救急車が車での10分間を前提としたものでは不十分かもしれない、そんな考えに至ります。

そこで出てくるのが、ある程度のことは自分たちで判断して、対処しようというAdvanced First Aidの考え方です。

ファーストエイド講習プログラムは、北米ではBasic講習とAdvanced講習に大別されています。例えばAHAのハートセイバー・ファーストエイド講習はBasic、WMAやARCなどの「ウィルダネス・ファーストエイド」は総じてAdvancedに区分されます。

日本ではAdvanced First Aidという概念がありません。近年、野外活動家を中心に広がりを見せているウィルダネス・ファーストエイドの導入によってようやく認知されてきたところです。

救急隊員という専門家に頼れない状況下で、どうするのか?

日本の救急法の概念では、心肺蘇生法を除けば「素人は余計なことはするな、救急隊員や医療者に任せろ!」で救急法教育が進められてきましたが、野外活動家だけではなく、今回のケースのように離島の住民にとっては、それでは八方ふさがりとなってしまう場合が現実にあるのです。

似たことは離島にかぎらず、内地でも山村など、医療僻地は多数存在します。

陸路で救急車が来れるとしても、到着までは1時間以上掛かるという場所も珍しくはありません。

そんな場所で救急対応を行わなければいけない第一発見者や地元の人たち。

そこで、近年、消防庁と厚生労働省で検討会が開かれ、救急車が到着するまでの間をつなぐために、ファースト・レスポンダー隊員を育成しようという動きが出てきています。

例えば、石川県の加賀市消防本部では、平生24年11月に「塩屋町ファーストレスポンダー隊」が発足させたというプレスリリースがありました。

このように正規の行政サービスとしての救急対応システムでは行き届かない、隙間を埋める発想が広がりつつあります。

問題となるのは、そのファースト・レスポンダーにどんな教育を行うのか、という点です。

「塩屋町ファーストレスポンダー隊」を例に取ると、「ファーストレスポンダーとは初期対応者という意味で、心肺停止状態等の命の危険がある方に対して救急車が到着するまで救命活動を行うことで、自分の住んでいる地域の方の「助かるべき尊い命」を救うことを目的としています。」とあり、主に心肺停止者対応を想定している模様です。(http://www.city.kaga.ishikawa.jp/article/ar_detail.php?ev_init=1&arm_id=101-0477-4994

人の命にとって最悪の事態である心肺停止に対応できること、これは基本中の基本です。

しかし、もともと北米で発達した概念であるFirst Responderとは明らかに異なります。北米的には心肺蘇生法しかできない人はBLSプロバイダーもしくはCPRプロバイダーと呼ばれます。

ファーストレスポンダーは、CPRプロバイダーであり、かつ非心停止対応もできるファーストエイド・プロバイダーであり、そのさらに上位概念としてのステイタスです。

ファースト・レスポンダーに求められる救命スキルは地域によって異なるかもしれませんが、日本の行政単位で広がりつつあるファースト・レスポンダーの概念は、つまるところ「制度化されたCPRプロバイダー」ということになりそうです。今後、必要に応じて発展していくのかもしれませんが、正直なところ少し違和感を覚える部分もあります。

BLS横浜では、今回、西表島や小浜島の方たちにファーストエイド講習を開催させていただく中で、ウィルダネス・ファーストエイドに準じる本来の北米型のファースト・レスポンダー育成の必要性を認識しました。

これまではウィルダネス・ファーストエイドということで野外活動を前提としましたが、僻地の山村で、場合によっては診療所に医師と看護師はいるかもしれないという状況下で必要なファーストエイドの知識と技術は何なのか?


そこを突き詰めていき、北米型のファースト・レスポンダー育成事業の試みを始められればと考えています。





posted by BLS横浜 at 23:03 | TrackBack(0) | ウィルダネス・ファーストエイド | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

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