横浜駅から徒歩5分の場所で、AHA-BLS-HCP、PEARS、ファーストエイド講習を開催しています。

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2017年05月03日

PEARSのシミュレーション

PEARSプロバイダーコースのシミュレーション「あり」と「なし」の違いですが、どちらも正式な開催方法です。

PERS with シミュレーション(ペアーズ)


インストラクターマニュアルを見ると、進行方法として、

・Learge-Group Discussion
・Small-Group Simulation

が選べるように設定されています。

大人数の座学で、座った状態でディスカッションして進めてもいいし、少人数に分けてマネキンを前にシミュレーションをしながら進めても良い、と規定されています。

どちらを選ぶかは主催インストラクターの考え方次第。

PEARSを学びに来る受講者のほとんどは、「できる」ようになることを求めているはず。そう考えると、シミュレーションは欠かせない、というのが私達の考え方です。

特に1つまえのG2005版のPEARSでは、シミュレーションを省略するという選択肢はありませんでした。

開発当初のPEARSコースを日本に導入してきた数少ないUSインストラクターの系譜を汲む私たちは、シミュレーションにこだわったPEARSを展開しています。



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2016年12月01日

子どもだけじゃない! 新タイプの急変対応研修 PEARS が注目される理由

BLS横浜がよく話題にしているPEARS(ペアーズ)とはなんなのか? というご質問をいただきました。

PEARSプロバイダーコース は、アメリカ心臓協会(AHA)が開発した新世代型の医療者向けの急変対応研修プログラムです。

PEARSプロバイダーマニュアル(ペアーズ)


医療者向けの急変対応といえば、BLS と ACLS のイメージがありますが、これを一次救命処置、二次救命処置と言い換えた場合、PEARSはゼロ次救命処置に相当します。

心停止が起きてしまったらどうしよう、というのではなく、心停止は予兆に気づけば防げるもの、という視座で作られている点で、今までにない画期的なプログラムです。


(院内)心停止は突然じゃない!

従来型の急変対応研修や救命講習は、「心停止は突然に起きる」という前提で組み立てられていました。

これは成人に多いとされる心原性心停止を考えればその通りなのですが、病院内で起きる心停止に関しては必ずしもそうではないと言われだしたのが2005年頃でした。

いまでは、病院内の心停止のうち、除細動が適応となる心室細動・無脈性心室頻拍によるものは2−3割程度にすぎないことが知られてきています。

逆にいえば残りの7−8割は、段階的に進行する「防ぎ得る心停止」であるというのが、最近の考え方です。

とすると、BLS や ACLS といった心停止後の対応を学ぶだけでは、救える命を救えないといえます。

そこでいま、ゼロ次救命処置研修である PEARS が着目されているというわけです。


小児で発達したアプローチを成人に活かす

PEARS の P は Pediatric(小児)。PEARS は本来的には、小児急変対応研修です。

小児領域では、もともと子どもは心原性心停止は多くないという理由から、「心停止の予防」にフォーカスした教育展開を行ってきました。その集大成が AHA の PALS (パルス)なのですが、その PALS の中からアセスメントと心停止予防の部分を切り出して、強化されたのが PEARS です。

2008年に開発されて、2012年にアップデートされたのが現在の PEARS は、引き続き小児急変をテーマとしていますが、そこで学ぶ呼吸障害と循環障害の病態生理とアセスメントの視点は、子どもに限らず、成人の生命危機のアセスメントにもそのまま使えます。

BLS横浜では、特に PEARS を小児以外に応用するという視点を強化した PEARS を展開しています。


命を落とす仕組みがわかれば救う手立ても見えてくる

ヒトが命を落とす原因を突き詰めれば、呼吸の問題と循環の問題に大別できます。さらにそれぞれの問題のタイプを下記のように分類できます。

 呼吸障害
 ・上気道閉塞
 ・下気道閉塞
 ・肺組織病変
 ・呼吸調整機能障害

 循環障害
 ・循環血液量減少性ショック
 ・血液分布異常性ショック
 ・心原性ショック
 ・神経原性ショック

目の前にいる具合の悪そうな人が命を落としてしまうとしたら、原因は呼吸障害なのか循環障害なのか? さらにはタイプはなに?

視点を絞って観察し、アセスメントして障害のタイプが分類できれば、必然的に命を救う手立てが見えてきます。

PEARS(ペアース)体系的アプローチの概要


例えば吸気時喘鳴があって、上気道閉塞にタイプ分類できれば、咽頭部の腫れを引かせるために血管収縮薬(アドレナリン)が必要という判断ができます。その間にも窒息で命を落とす危険があれば、何らかの方法で気道確保をし、自発呼吸が難しければ人工呼吸によって、酸素供給をして根本治療までの時間稼ぎをする手立ても見えてきます。

このように命を落とす仕組みを理解して、心停止にさせないための介入を行う、そのための体系的なアセスメント法を学ぶのがPEARSです。


ホンモノの患者映像、バイタルサインで観察力を身につける

実際に生命危機に瀕している患者映像とバイタルサインデータ、呼吸音など使って観察とアセスメントを訓練していくというのも PEARS が絶大な支持を受けている理由のひとつです。

恐らく日本では倫理的な問題から、このような映像教材を作るのは極めて難しいと思います。

PEARSのケース映像(G2005版)
(開発当初のG2005版PEARS ProviderコースDVDより)



呼吸努力が見られて、呼気延長とウィーズ( Wheeze 呼気時喘鳴 )があったら、下気道閉塞疑いが濃厚、というのは教科書的に学べます。

しかし、患者を診たときに呼気延長やウィーズに気づけるか、が問題です。

知識と臨床判断をつなげるような訓練は、実臨床で鍛えていくのがいちばんですが、学べる現場は極めて限定的です、そこを体系的に訓練できる教材は PEARS 以外ないでしょう。(PALS の DVD でもそこは学べません)


シミュレーションの効用

PEARSで学ぶのは、大きく次の2点です。

・体系的アプローチ(アセスメント法)
・安定化のための介入

アセスメント法はリアルな映像教材を見ながら、受講者同士のディスカッションを通して学びます。

アセスメントの目的は、障害のタイプと重症度を判定することですが、判定をしたらオシマイ、というものではありません。言うまでもなく、次のステップである急変対応(介入)につなげるための過程に過ぎません。

その安定化のための介入をトレーニングするのが、シミュレーション・セクションです。

マネキン相手ではありますが、所見を見ながら、気道確保をしたり、経路と流量を考えながら酸素投与したり、輸液をしたり。それによってリアルタイムにバイタルサインや患者の反応が変わってきます。反応を再評価して判定、介入を繰り返していく訓練は机上で行うものとはまったく違います。

というのは、そこにはチームが介在するからです。

PEARS(ペアーズ)の評価―判定―介入のサイクル



なぜか2012年の改訂 PEARS では、シミュレーションを省略しても構わないと方針転換されたため、時間短縮のためにシミュレーションを一切行わない PEARS コースも増えてきているのですが、現場でのアウトカムを考えたときに、シミュレーション訓練は欠かせないと考えています。

その分、時間が長めになるのは致し方ない部分ですが、せっかく1日かけて、新しい急変対応の概念を学ぶのであれば、しっかりと見につけてほしい、という思いで PEARS 展開しています。




ということで、PEARS がいかに画期的なプログラムかということを説明してきました。

2008年にPEARSが開発されてから、日本でも似たコンセプトでいくつかの研修プログラムが作られてきましたが、やはり、リアルな患者の動画を使うという点では PEARS に追いつくものとはなっていません。

今後も倫理的な問題を考えると、日本人の実際の患者映像を使った教育プログラムができるかといえば、難しいのではないかと思います。

だからこそ、米国で撮影された非アジア系の子どもの映像であるという、私たちからしたら日本の現場にそぐわない部分があったとしても、それでもあまりある価値があると考えています。


現時点、横浜での次回の PEARSプロバイダーコース with シミュレーションの開催予定は立っていませんが、2017年3月以降くらいには計画していきたいと思っています。

また、

 12月23日(祝)・・・福岡県久留米市(CPR-net久留米と共催)
 12月26日(月)・・・静岡県藤枝市(BLS静岡スキルアップラボと共催)
  2月26日(日)・・・沖縄県那覇市(BLS沖縄と共催)

での Sim-PEARS 開催は決まっており、引き続き参加者募集中です。


PEARS自体は今は全国展開されていますが、本来のシミュレーション込みの PEARS プロバイダーコースを開催しているところはほとんどありません。そのため、BLS横浜が提供する Sim-PEARS の需要は高く、求めに応じて全国に出向いて講習展開を行っています。

もし病院等で開催希望があれば、出張講習も検討しますので気軽にご連絡ください。




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2016年02月22日

呻吟(しんぎん)…肺組織病変の兆候

PEARSを学ぶからには、呻吟(しんぎん)についても知っておいてください。

PEARS-DVDの中ではGrantingという英単語で表現されています。そして実際の呻吟を呈している乳児の映像も出てきます。

呻吟は泣き声のようにも聞こえる、呼気時の「うめき声」です。
これは息を吐くときに声門が閉じるために生じる音です。

なぜ息を吐くときに声門を閉じるのかというと、胸腔内を陽圧に保って、肺が虚脱するのを防ごうとするからです。

南山堂の医学大辞典では次のように説明されています。

「呼気性呻吟の出る理由は呼気時に声門を閉じることにより、気道内とくに肺胞内に陽圧を残して、肺胞の虚脱を防ごうとするものであり、持続的陽圧呼吸法continuous positive airway pressure(CPAP)の目的とするところと同じである」


簡単に説明すると、肺炎など、炎症によって肺胞が水っぽくなっている状態で、息を吐き切ってしまうと、肺胞がぺたっとつぶれて、表面張力で張り付いてしまいます。

そうなると、次に息を吸って肺胞をふくらませるときに、張り付いたのを剥がすためにより強い力が必要というのは想像できると思います。

風船をふくらませる時も最初が一番力がいりますよね? ある程度ふくらんだところから、風船を大きくするのにはさほど努力は要りません。

つまり、息を吐き切ってしまうと、呼吸がしにくくなるため、それを防ぐために息を吐ききるまえに声門を閉じて肺胞が潰れるのを防いでいる、そんな体の自然の働きです。

このことをイメージしておくと、呻吟を見たときに、肺胞が潰れたら膨らみにくい病態になっているんだなと想像できます。肺胞の問題だから、上気道閉塞や下気道閉塞ではなく、肺組織病変だと関連付けられます。



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2016年02月21日

PEARSでは教わらない呼吸障害の兆候の機序

PEARSの学習を楽しくするためのヒントを少々。

生命危機状態として、PEARSプロバイダーコースでは、呼吸障害4タイプと循環障害2タイプの判定方法を学びます。

そのうち、呼吸障害の4つ、すなわち上気道閉塞と下気道閉塞、肺組織病変、呼吸調整機能障害を判定するためには、それぞれに特徴的な症状・兆候を見つけるのがポイントになります。

この表の中では、特徴的な兆候に下線を入れました。

PEARS(ペアーズ)プロバイダーコース呼吸障害の判定


これがわかれば、PEARSコース上、判定はできるのですが、丸暗記しても面白くありません。そこで予習で下記の点を調べてくることをお勧めします。

残念ながらPEARSのテキストにはそこまで細かいことは載っていませんので、手っ取り早くはネット検索などを利用するといいと思います。

1.上気道閉塞では、吸気時に喘鳴(狭窄音)が聞かれるのはなぜか?

2.下気道閉塞では、呼気時に喘鳴(狭窄音)が聞かれるのはなぜか?
  (このメカニズムが分かれば、呼気延長の理由もわかります)

3.呻吟とはなにか? 呼吸のどのタイミングで聞かれるのか? なぜ起きるのか?

4.いわゆる断続性ラ音が聞かれる機序は? 肺のどの部分がどうなってる?


これらをある程度調べておくと、PEARSが俄然おもしろくなってきますので、ぜひ探ってみてください。





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2015年12月23日

「わかる」と「できる」は違う シミュレーションの効用

わかることと、できることは違う。

誰でも頭ではわかっていると思います。

しかし、このことを強く突きつけられるのが、シミュレーション・トレーニングではないでしょうか。


Sim-PEARSプロバイダーコースを例に、説明してみます。

PEARSでは、事前学習に加えて、ビデオ教材で体系的アプローチの説明を聞いて、映像を見ながらのディスカッションベースのアセスメント訓練で、A-B-C-D-Eアプローチの仕方を段階的に身に着けていきます。

息も絶え絶えに呼吸をする子どもの映像、顔面蒼白で眼球上転している子どもの映像。

そんなリアルな教材を使ってアセスメントの練習をする、これまでに経験したことがないリアルな学習体験に、座学でのディスカッションだけでもそれなりに満足感を感じるのがPEARS(Simなし)です。

しかし、この後、2010年版からはオプション扱いになっている「シミュレーション」を行うと、受講者の心持ちは変わります。

さっき、映像をみて練習して、なんとなくできる気になっていた体系的アプローチが、マネキンの前に立ち、チームメンバーと向き合った時に、ちっとも進まなくなるのです。

「頭のなかが真っ白になった」という感想は珍しくありません。

分かった気になっていたけど、できない。

そんな現実に直面するのです。


PEARSプロバイダーコースで、体系的アプローチを学ぶのは、試験に合格するためではありません。

臨床で使うために学ぶのだという点は言うまでもありません。

体系的アプローチという手法を知るのが第一歩ですが、知るだけでは使えない。

そのことに気づくだけでも、シミュレーションの効果は絶大です。

シミュレーションを通して使い方の練習を行い、チームメンバーとの連携の仕方と報告を体得するというさらなる学習体験が必要です。

そして、最終段階として実臨床で使ってみる。

そうして、「知る」と「できる」の間の溝を埋めていく必要があります。

特に実臨床の前に、患者さんに不利益のないシミュレーション学習で経験値を上げておくことは大きな意味があります。シミュレーションありとなしでは、「できる」までの段階差は雲泥の違いといって過言ではありません。




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2015年12月03日

AEDを使った二次救命処置(ALS)トレーニング 【Sim-PEARS】

BLS横浜が開催している「PEARS with シミュレーション」での心停止ケースシミュレーションでは、AEDを使った二次救命処置(ALS)を経験してもらっています。

病棟での心停止にAEDとバッグマスクで挑んでもらうのですが、BLS-HCPと違うのはチームメンバーの看護師が6人いるということ。そして途中から医師と電話連絡がつき、薬剤投与の口頭指示が出るという点。

PEARSでは、PALSと違って、リーダーはインストラクターが行うということになっていますので、このような体裁をとっているわけですが、ここでも重要なのは報告です。チームダイナミクスでいえば情報共有でしょうか。

ナースだけでAEDを使っているシチュエーションであれば、医師としては、AEDの解析結果が気になるところです。

つまり、除細動のショックをしたのか、それともショックは不要と言われたのか?

これによって、アルゴリズムが違ってくるからです。

AEDがショックが必要と判断したのであれば、心停止としてはおそらく心室細動(もしくは無脈性心室頻拍)です。そして、AEDがショック不要と判断したのであれば、心停止のタイプは、無脈性電気活動もしくは心静止です。(通常はモニター波形を見て判断するところを、AEDでの蘇生ではAEDの挙動から判断する、ということです。)

ACLSにしてもPALSにしても、両者ではアルゴリズムが別です。

質の高いCPRが必要という点では同じですが、薬剤投与が違ってきますし、優先すべきもの(除細動/原因検索)も違ってきます。

ここを認識しているかどうか、というのが、この心停止シナリオでは試されるところです。


医師に対して「AEDを使いました!」という報告では不十分だというのはわかるでしょうか?

AEDを使ったというのが、パッドを装着したという動作を意味しているのか、除細動のショックをしたという意味なのか明確ではないからです。

AEDがショック判定をして除細動をしました、もしくは、ショック不要でした、をはっきり伝える必要があります。

この点を認識してもらうために、「ショック不要」設定にしたAEDトレーナーを使ってシミュレーションを行っています。

BLSはとりあえず早期除細動と質の高いCPRができればいいと思われがちですが、病院の中でのBLSはBLSでは終わりません。そして小児に関して言えば、ショック不要と言われる無脈性電気活動のケースが多いはず。

AEDときたら、必ずショックをするものだという昨今のBLS訓練ゆえの先入観を脱却するという点でも、印象深い学習体験になるようです。





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2015年12月02日

Sim-PEARS、シミュレーション・トレーニングの魅力

BLS横浜で開催するAHA-PEARSプロバイダーコースでは、シミュレーション・トレーニングを取り入れています。(正確にいうと「省略」していません)

BLS横浜の工夫としては、PEARS-DVDの動画で示されるモニター画面だけではなく、リモコン操作できるiPadのモニター心電図アプリを併用して、リアルタイムにバイタルサインを変化させて、シミュレーションの効果を強化しています。

iPhoneの心電図モニターアプリ sim-mon
iPhoneの心電図シミュレーターアプリ sim-mon



PEARSの根幹は、評価-判定-介入-再評価 のサイクルにあります。

PEARS(ペアーズ)の評価-判定-介入のサイクル


問題のタイプと重症度を判定して、安定化のための介入をしたらおしまいではなく、その処置の結果を見て、評価をしていくことが重要です。(ビジネスでいうPDCAサイクルと同じです)

例えば、酸素投与方法として、単純マスク4リットルとした場合、それが妥当なのか、より高流量が必要ではないかは、酸素飽和度の上昇や呼吸状態の変化を見なければ判断できません。

そこで用いるのが、心電図波形や数値を自由に変更することができるモニター心電図のシミュレーターです。

酸素投与後の酸素飽和度の変化はどうなのか、言葉だけのシミュレーションだと抜けてしまうことが多いですが、モニターを使うとよりリアリティを出すことができます。

他にも、例えば、本来はバッグバルブマスク換気が必要な場面で、低流量酸素投与しか行っていない場合は、いつまでもサチュレーションを上げないことで、インストラクターの誘導ではなく、主体的に問題認識を捉えて考えてもらうこともできます。

ショックのケース・シミュレーションでも、輸液のボーラス投与が奏功すれば、呼吸数や心拍数などを斬減させることで、再評価の意義を実感してもらうこともできます。

本来は1千万円近くする高規格シミュレーション・マネキンを使わなければ再現できなかった学習体験が、iPadと数千円(2015年12月現在で2,500円)のアプリで再現できるのは魅力です。


PEARSに限ったことではありませんが、医療現場のトレーニング、特に非心停止対応訓練では、iPadの活用はおすすめです。

BLSやACLSと違って、条件反射を鍛えるのではなく、考え方を鍛えるのがファーストエイド系の非心停止対応訓練。考える材料をどう示すか、そして考える時間を確保することが重要です。



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2015年12月01日

Sim-PEARSプロバイダーコース、シナリオの進め方

PEARSインストラクターマニュアルには、ケースごとの詳細なシナリオシートが載っています。

AHA-PEARS(ペアーズ)プロバイダーコースのシナリオシート


顔色や呼吸様式、呼吸音、毛細血管再充満時間、バイタルサインなどは、DVDの中で動画で示されますが、血糖値や瞳孔径などの情報は、このシナリオに基づいてインストラクターが提示していきます。

シナリオにはケースの導入として、「あなたは4ヶ月の乳児の評価をしています。母親によると3日前から嘔吐を繰り返しており…」というような状況が示されるのですが、BLS横浜では、あえてこの状況提示を行わずにケースを始めることがあります。

なぜかというと、シナリオによっては、「あ、これは敗血症性ショックだな!」などと原因がミエミエなものも少なくないからです。

現実の臨床ではある程度情報があった上で、患者さんに接するのがふつうですから、私たちは常に「情報」による先入観、バイアスを持って診療にあたっています。

場合によっては、先入観ゆえに別の問題を見落とすという可能性も否定できません。



PEARSは臨床所見からフィジカルアセスメントをする力を鍛えるプログラムです。体系的アプローチという見落としを防ぐための標準的な評価方法を身につけるのが目的です。

そのため、臨床からすると不自然ではありますが、あえて、情報は一切提示せず、0の状態から患者を見て、臨床症状だけで体系的に判断していく練習をしてもらっています。



シミュレーション・トレーニングの中では、あとから家族や目撃者が駆けつけて、ようやく話が聞ける、という形で、傷病者の背景や既往などを提示しています。

ここで臨床所見からの判定と、患者背景が一致すればより方向性に確信を持てますし、場合によってはより精度を上げることができるかもしれません。


シナリオトレーニングの中では、受講者の方は「家族を呼んで!」とか「ドクター報告を!」とすぐに助けを求めますが、あえて情報は出さない。

すこし意地悪かもしれませんが、こうして、目の前の患者さんの状態だけである程度判断するという思考を身につけると、どんな場合でも強いのではないでしょうか?


バイスタンダーとしてのファーストエイドの現場は、まさにこれです。

なにが起きたのか、傷病者の状態、既往もまったくわからない。

こんなときにひるまず対峙できるのが、PEARSプロバイダーの強みだと思います。





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2015年11月12日

上気道閉塞の吸気喘鳴、下気道閉塞の呼気時喘鳴のメカニズム

PEARSプロバイダーコース受講予定の方から質問のメールをいただきました。


気道閉塞の徴候について

上気道閉塞の徴候として、吸気性喘鳴があるのですが、なぜ上気道閉塞の際に吸気性喘鳴が出現するのでしょうか。

また下気道閉塞の徴候として、呼気性喘鳴がありますが、その際も呼気性喘鳴が出現
する機序が考えられないです。

上気道閉塞の原因としてクループやアナフィラキシー、異物吸引、感染がありますが、上気道閉塞であっても気道が閉塞しているので呼気の際にも喘鳴が見られてもおかしくないのではと考えています。

下気道閉塞の際にも、呼気だけでなく吸気にも喘鳴が聞くことができないのかと考えました。またテキストには、「下気道閉塞の際に吸気性喘鳴を聞くことができるのはまれ」と書いてあり、なぜかわかりませんでした。

適切な評価をするうえで、暗記では通じないと思ったので今回気道閉塞の喘鳴について質問させていただきました。



理解するための質問、大歓迎です。

この質問に対する答えですが、まず、上気道閉塞に見られやすい吸気時喘鳴は「舌根沈下」をイメージしてもらうといいと思います。

簡単にいうと、いびきです。

いびきって、息を吸うときに聞こえますよね?(今度、隣に寝ている人を観察してみてください)

舌が落ち込んで、気道を覆うようにかぶさっているのをイメージしてください。

吸うときに舌が吸い込まれて張り付いて、気道が塞がれる。そのとき、わずかな隙間から空気が流れこむときに聞こえる音がいびきです。(狭い隙間を通るときに音がなるのは笛と同じ仕組です。)

このことからわかるように、息を吸うときには上気道(胸郭より上の喉)に陰圧がかかります。

クループやアナフィラキシーで上気道全体が腫れて狭窄している場合も、吸気時には上気道に陰圧がかかりますから、気管の奥の方から吸い込まれるように圧力がかかり、気道がより細くなるような力が働き、狭窄して喘鳴(連続性の音)が聞こえるというわけです。

吐くときは、下気道から空気が押し出されてくる状態になりますから、上気道は陰圧になりません。ですからさらなる狭窄が起きることもなく、喘鳴は聞こえにくいといえます。



下気道閉塞の場合は、胸郭が縮んで胸腔内圧を上げて空気を押し出しますので、胸郭内にある下気道(つまり気管支)はギュッと圧縮された形になります。もともと攣縮や分泌物で狭窄していたところが、胸腔内圧が上がることでより細くなり、笛のように喘鳴が聴こえるというしくみです。

呼気時に陰圧となるのは胸郭内にある気道、つまり下気道のみです。上気道は胸郭外にありますから胸郭の収縮に伴う陰圧の影響は受けずに細くなりません。ゆえに呼気時の狭窄音は聞こえにくいといえます。


実際のところ、狭窄が顕著であれば、吸気でも呼気でも喘鳴が聞こえることがありますが、どちらの方がより強く聞こえるかという観点で考えてもらえたらと思います。

下気道閉塞を疑うのであれば、呼気時喘鳴の他に、呼気延長も見られたりします。喘息症状を思い出してみてください。がんばって息を吐き出す感じです。なぜ、息が吐きづらくて呼気相が延長するのか?

先ほどの呼気時喘鳴のしくみを考えてみればわかりますよね? 呼吸運動で胸郭が縮まるために、胸腔内圧が上がって下気道が狭くなるために、履く時に努力が必要になるせいで、呼気相が延長するというしくみ。


丸暗記するのではなく、このように理解すると忘れないと思います。




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2015年06月29日

沖縄初のAHA-PEARSプロバイダーコース、開催報告

沖縄県下で初めての開催となるAHA-PEARSプロバイダーコースが終了しました。

沖縄県那覇市で初開催のAHA-PEARS(ペアーズ)プロバイダーコースbyBLS沖縄


那覇で精力的に活動しているAHA活動拠点BLS沖縄さんとのコラボで実現した初の企画でした。

2008年にAHAが開発して以来、英語教材しかないにも関わらず、じわじわと日本でも認知されてきた看護師向け急変対応プログラム。

沖縄では開催実績がなかっただけにどれだけ申し込みがあるか手探りではありましたが、土日で立て続けに2回開催したコースは満員御礼、キャンセル待ちが出るほどの盛況に終わりました。

PEARSで学ぶのは『救命の基本原理』

PEARSは小児急変対応コースですが、その活用範囲は小児を専門に扱う医療者だけではありません。

今回の沖縄PEARSでは、小児の認定を持つ看護師さんの参加もありましたが、救急救命士さん、歯科衛生士さん、民間の救命法指導員さんなど、救命の基本原理を学びたい!、という人たちが幅広く集まった印象です。

最近はとかくインスタント化される救命講習、普及のためにはそれは必要なことですが、きちんと理屈を理解した上で実施すべき人たちが「しっかり学べる」教育がなくなってきているのが現状です。

そんななか、丸暗記で条件反射で動ければいい、というレベルを卒業した人たちにぴったりだったのがPEARSプロバイダーコースだったんじゃないかなと思います。

シミュレーションは外せない

特にBLS沖縄ならびにBLS横浜が提供するPEARSでは、シミュレーション・トレーニングを重視しています。

最近、座学のレクチャーとディスカッションだけで終わらせるPEARSも普及してきていますが、今回の沖縄PEARSを受講してくださった方たちも、異口同音でシミュレーションがあってよかったという点では異口同音でした。

頭でわかるのと、実際にできる、はまったく別物です。

シミュレーションを省略しないフルサイズのPEARSでは、体系的アプローチを事前学習で知識として知り、次に映像を使ったディスカッションで具体的な使い方を学び、最後にシミュレーションの中で行動・言葉に出して実践して、使い方を身につけるという3段階で進めます。

PEARSはBLSとは違って、体育会系的に体を動かせればいいというのとは根本的に違いますので、理解し、実践できるようになるためには、それ相応の訓練方法が必要なのです。


ラピッド・レスポンス・チームの教育としても有用なPEARS

PEARSでは、心停止後の対応も扱いますが、どちらかというとおまけみたいなもので、PEARSが目指すメインは心停止になる手前の段階で気づいて心停止を予防することにあります。

というのは小児が心停止にまで陥ると救命の可能性がほとんどない、ということのほか、心臓突然死が多くはない小児では心停止は防げるというのが根底にあります。

これに対して成人傷病者は突然に心室細動を起こして心肺停止に陥るというイメージが流布していますが、実はそうではないという点が近年強調されてきています。

特に病院内心停止は、成人であってもそれは偶発的なものではなく、予兆があるとはよく言われています。

そこに着目すれば、PEARSの心停止予防の観点と介入はほぼそのまま成人傷病者にも使えるといえます。

例えば、Rapid Response Team/systemという言葉を聞いたことがあるでしょうか?

RRTとRRSと略されたり、迅速対応チームと日本語で呼ばれることもあります。

これは心停止の時に病院内の医療者が招集されるコードブルーやドクターブルーなどの「コードチーム」に対して、なんだか様子がおかしい、という段階で呼ばれる急変対応というか急変アセスメントチームのこと。

米国やオーストラリアで制度化されて成功を収めて、日本でも導入が検討されている段階なのですが、これらのRRTの概念は、心停止は突然ではないから、それを防ぐためのアセスメント+初期対応の教育が必要であるという文化的な転換を示しています。

このRRT教育に該当するのが、PEARSプロバイダーコースなのです。

他にもFCCSやAMLSなど、他団体に着目すれば心停止以前のアセスメントと安定化をカバーしたプログラムはいくつかはありますが、アメリカ心臓協会AHAのプログラムの中ではPEARSだけがこれに相当します。

残念なのはPediatric、つまり小児という枕詞がついてしまっている点です。

再三述べているのように、PEARSは小児に限らずすべての院内急変に対応できる考え方、安定化介入をカバーしています。

病院勤務の看護師が学ぶべき急変対応としては、BLSとPEARSだと言い切ってしまっていいと思います。

ACLSも大切ですが、ベッドサイドにいる看護師が自分の責任下でできること、効果が絶大であるという点では、ACLSよりは先にPEARSを知っている必要があるでしょう。


沖縄でのPEARS普及の今後に期待

さて、沖縄で初開催のPEARSの話に戻りますが、沖縄の方たちにとってもPEARSは斬新な内容だったようで、コース終了後、夜遅かったにも関わらず、なかなか人がはけず、受講者同士での情報交換やインストラクターへの質問や相談で盛り上がっていたのが印象的でした。

新しく学んだ概念をどうやって自分のフィールドに活かしていくのか、そんな議論が続いていました。

インストラクターになりたい!

そんな声も少なからずありました。

陸続きの内地と違って、県外に学びに行くというのが容易ではない沖縄で、自分たちでPEARSコースを開催できることの意義は他県に比べて高いのかもしれません。


BLS横浜としては、沖縄でPEARSを定期開催できるような具体的なビジョンが立つのであれば、インストラクター育成やコース運営に関して最大限にお手伝いしていきたいと思っています。

BLSインストラクターに比べると、やや難易度が高く、医学的な知識も求められるPEARSですが、仮称「PEARS沖縄トレーニングサイト」のサイト長を担ってくれるようなキーパーソンが名乗りでてくれれば、本格的な支援を考えていきたいと思っています。




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2015年04月28日

PEARS受講前に知っておいてほしいこと 〜酸素の流れを考えると人の生死が見えてくる

酸素を細胞に送り続けること。

これが人が生きている根源的なしくみです。細胞に酸素が届かなくなると、人は死にます。死因はいろいろあっても、「酸素化と灌流」が原点。よく覚えておいてください。

大気に21%含まれる酸素が、体内の細胞までどういう経路で届くでしょうか? その経路が阻害される事態が生命危機であり、心停止に次いで急を要する緊急事態です。

1.呼吸障害(4種類)
酸素が細胞まで届くための入口は口と鼻。そこから喉を通って肺に届きます。

この過程で、もし喉に食べ物が詰まっていたら? 火事で熱風を吸い込んだり、アレルギー反応で喉の粘膜が腫れて空気の通り道がふさがってしまったら?

これが上気道閉塞です。呼吸障害で最も怖い事態。喉の奥から気管分岐部までの上気道は一本しかありませんから、これが詰まったらアウトです。

救急で気道 Airwayを真っ先に評価するのはこういう理由からです。酸素が体内に取り込まれるゲートが上気道なのです。これが破綻していたら、その先も機能しません。

無事に上気道を通過した酸素は、気管支を通って肺胞に届きます。しかし気管支に痰が詰まっていたり、喘息のように細く狭窄した状態だと酸素の流れが滞ります。これが下気道閉塞です。

肺胞に酸素が届いても、肺炎などで肺胞が炎症を起こしていて酸素を血液に溶け込ませる機能が障害されている場合、酸素の流れが滞ります。これが肺組織病変。

このように酸素が血液に溶け込むまでの過程に問題がある場合を、呼吸障害と呼んでいます。

上気道、下気道、肺組織病変。酸素の流れを考えると、簡単ですね。

呼吸障害にはもう一つ、呼吸調整機能障害というタイプがあります。これは呼吸筋を支配してる中枢神経の障害です。頭部外傷や薬物過量などで、呼吸抑制が起きたり、呼吸のリズムが狂った場合がこれに含まれます。


2.循環障害(2種類)
肺胞から血液に溶け込んだ酸素は、血流に乗って細胞へ運ばれて行きます。

この過程に問題があるのが循環障害で、ショックと呼ばれます。

出血や脱水などで、血液の量が少なくなっていたら必要な酸素運搬が十分に行えません。これが循環血液量減少性ショックです。人の死因としては最も多い、見逃してはいけない生命危機状況です。

血液の絶対量は問題なくても、血管が病的に拡張することで血圧が下がり、さらに血管の網目が広がって水成分が組織の隙間に漏れでてしまうことで、酸素運搬能力が下がる場合もあります。これが血液分布異常性ショックです。

血管が拡張してしまう原因は、病原菌が出す毒素による炎症反応(敗血症)や、アレルギー反応による全身性の炎症反応(アナフィラキシー)がよく知られています。


このように人が命を落とす原因を酸素の流れがどこで阻害されるか、で考えるとわかりやすいです。

原因がわかれば、その対応策見えてきます。

そこをパターン化して、認識できるようにして、対応策を考えるのがPEARSプロバイダーコースです。




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2015年03月22日

同じ「徐脈」でもACLSとPEARSでは大違い

PEARSプロバイダーコースばかりやっていて、たまにACLSコースをやってみると、いろいろと違和感を感じるものですね。

ACLSでは、徐脈と頻脈のケースで非心停止を扱いますが、PEARSにおける頻脈や徐脈とは基本的に別物です。

ACLSプロバイダーマニュアル107ページに明記されていますが、ここでいう徐脈は「徐脈性不整脈」ということで、あくまでも「不整脈」のみを扱うのがACLSの特徴です。

基本は房室ブロックによる徐脈を前提にしていますから、介入としてはアトロピン投与や経皮ペーシングです。

それに対して、PEARSで出てくる徐脈は、低酸素による生理的なもの、つまり洞性徐脈ですから、徐脈に対する介入は酸素投与と人工呼吸になります。

同じ徐脈でも、意味をよく考えないと受講者は混乱するかもしれないなと思いました。

ACLSでも、呼吸停止ケースやPEAの部分では「洞性徐脈」についてもわずかに触れられているのですが、あまり印象に残る部分ではないでしょうね。

大人と子どもの違いといえば、それまでなんですが、ACLSプロバイダーマニュアルの26ページや30ページあたりに書かれているような迅速対応チーム(Rapid Response Team)に必要なスキルという点で考えると、ACLSはミスリードをするような印象も否めません。

AHAのACLSは、その名の通り、cardiac(心臓)のライフサポートです。

汎用性のあるアドバンスド・ライフサポートではないという点に注意する必要があります。

つまり、急変対応研修として考えた場合は、癖があるというか、やや偏った内容なのがAHA-ACLSといえます。


ACLSが不要と言っているのではありません。ACLSではカバーできない部分が大きいという認識が重要なのではないかー。

患者安全研修について考えたとき、私たちは急変対応を根本から考え直す必要があるのではないかと思います。



ちなみに、洞性徐脈も不整脈による徐脈もどちらもしっかりカバーしている唯一のプログラムがPALS。小児に特化したコースと思われがちですか、ゼネラルな急変を考えた時にそこから学べるものは、なにものにも代えがたいと思っています。




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2015年02月14日

PEARSプロバイダーコースのシミュレーション

PEARSのシミュレーションの良いところは、ACLSやPALSと違って、「ゴール設定がされていない」ところにあります。

ACLSやPALSプロバイダーコースでは、看護師やコメディカルであっても 医師としてのリーダー役割 が求められます。実技試験に合格するためには、医師の視点で考え、診断し、治療の指示を出すことが求められています。

医師以外の受講者にとっては、実臨床ではありえない無理や状況を強いられると言えます。

これがプレッシャーとなり、やもすると実技試験に合格することが第一義にすり替わり、なんでACLSやPALSを学ぼうと思ったのか、というもともとの本筋を見失いがちです。この学習が看護師や技師といった自分の臨床にどう役立つのかという肝心な部分が見えづらくなってしまうのです。

もともとは日本では医師以外が、ACLSやPALSコースを受講するのは、不自然なことです。(その職務内容からして)

看護師やコメディカルが、二次救命処置領域のことを学ぶ必要性や妥当性がないわけではありません。しかし、日本の事情に合わせた医師以外の二次救命処置プログラムがないから、仕方ない。そんな土壌の中で、看護師や救急救命士がAHAのACLS/PALSを受講することが一般化してきてしまった経緯があります。


そんな不自然さが当たり前になってきたところに登場したのがPEARSでした。

看護師やコメディカルにとって「不自然さと無理がない」というのがPEARSコースでのシミュレーションの最大の特徴だと考えます。


AHA-PEARSプロバイダーコースのシミュレーションat BLSくまもと
PEARSのシミュレーション風景 at BLSくまもと



ACLSやPALSと違って、PEARSには実技試験(メガコード)のゴール設定を示すチェックリストはありません。そもそも実技パフォーマンスは求められていないのです。

そして、リーダー役は受講者ではなく、インストラクターが行うことになっているのも大きな特徴です。ですから、インストラクターが演じる医師(リーダー)役その設定次第でいくらでも難易度を調整できます。

リーダー(医師)が急変現場に臨席して、的確な指示を出すというのがデフォルトかもしれませんが、電話連絡だったらどうするか? 不慣れな新人研修医だったら? 間違った指示がでたら? 包括指示で動くように、という指示だったら? など、受講者の職場環境や立場に合わせて、アレンジすることが可能です。

このあたりはAHA講習には珍しい寛容さといえます。

インストラクターマニュアルできっちりと規定されていないゆえに、マニュアル至上主義で育ってきたインストラクターには逆に難しいと感じる部分かもしれません。

しかし、これを私達はPEARSコースの画期的な部分と捉えています。

基礎となる「お作法」を身につけさせるのが、AHA講習のゴール設定ですが、それ以上の部分を公式講習の中で扱えるからです。

PEARSは筆記試験としては、判定と医学的な介入が求められていますが、実技のパフォーマンスでは規定されていません。ですから、例えば保育園ナースやツアーナースなど、酸素も点滴もない環境で働く人には、通報・報告というアクションを介入の主たるゴールに据えてシミュレーションを行っています。

実際、PEARS Provider Manual(英語版)の20ページに書かれているように、介入(Intervene)の第一義は、

Getting help by activating a medical emergency or rapid response team.

であり、つまり応援要請です。

そして、本文中でも、The best action may be to get help.と書かれており、ファーストエイドと同じで、いかに的確に救命の連鎖をスタートさせるかというところが最大の救命行動です。

ここに着目すると、輸液や酸素投与以前に、119番通報や、主治医・嘱託医などに報告する方法を訓練するという内容もPEARSには含まれてくることになります。

近年、医療機関でもSBARという報告ツールの必要性が話題になりますが、これもまさにPEARSと親和性の高い内容といえます。




このような受講者に合わせたアレンジをすること、どんな人にとっても、現場で使える技術を学べる講習となるのがPEARSの面白いところです。

ACLSなどは、職種によっては決定的に、使えません。

しかし、PEARSは運営の仕方次第で、どんな立場の人にもそのベネフィットがある、そう考えています。


私たち(BLS横浜ならびにBLSくまもと)が、PEARSのシミュレーションにこだわっているのはこうした理由からです。

受講者それぞれがPEARSのスキルを活かせるような支援がしたい。

ですから、受講人数を4名ないしは6名と少人数にしぼって、省略しても構わないことになっているシミュレーションを取り入れているわけです。




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2015年01月25日

脈拍触知からわかること 〜血圧とショックの関係性

血圧に関係する血管壁の弾力は、拡張期血圧に特に影響を与えます。

循環血液量減少性ショック等の場合は、血圧を維持するために末梢血管が締まります。その結果、拡張期血圧が上がるため、収縮期血圧との差が小さくなるため、脈拍の触れは弱く感じられます。

それに対して、血液分布異常性ショックは、血管が拡張する病態ですから、拡張期血圧が下がります。そのため収縮期血圧が低い状態であったとしても脈圧が大きくなるため、脈拍触知では、しっかりはっきりと強く振れるように感じる場合があります。

これを反跳脈と言っています。

ショックというと、脈拍が弱く感じられるとは限らない、ということです。





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2014年12月17日

ショックの輸液ボーラス投与に糖質液を使ってはいけない理由

AHA-PEARSプロバイダーコースにおけるショック(循環不全)への介入は、輸液のボーラス投与です。

その際の注意点として、糖質液はダメ、というものがあります。

ブドウ糖を使って浸透圧を調整してある糖質液は、体内に入るとすぐにブドウ糖が代謝されて、ただの水(自由水)になってしまいます。

そうなると、通常の水と同じ体内分布で、細胞外液としては1/3の量しか寄与しません。

その1/3のうち、血管内に留まるのは1/4と言われていますから、結果的には1000ml輸液しても、血管内に残るのはわずか83mlあまり。


これが糖質液が推奨されない理由です。糖質液は循環血液量を増やすには有効ではないということです。

一方、PEARSでも推奨されている等張晶質液(生理食塩水や乳酸リンゲル液など)では、電解質による浸透圧が維持されますので、細胞外液補充液として働きます。ですから全量の1/4が血管内に留まる、つまり、250mlの循環血液量上昇が望めます。


同じ総量を輸液しても、晶質液か糖質液かによって、これだけ差が出てしまうんですね。



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