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2013年06月18日

実践に向けて −心肺蘇生法講習進行の工夫

BLS横浜オリジナル講習「傷病者対応コースforバイスタンダーズ」の最初の1時間はCPR練習です。

AHA(アメリカ心臓協会)のファミリー&フレンズCPRコースDVDを使っていますが、BLS横浜ならでは工夫をたくさん盛り込んでいます。

例えば、この写真は、DVDを使った「見ながら練習」(PWW: Practice while watching)が終わった後の応用練習の様子です。


ファミリー&フレンズCPR応用練習の様子


第一救助者、AEDを持って到着し操作する人、そしてチェックリストを見ながら二人の行動を観察し、終了後に振り返りを行う人。3人一組で役割を交代しながら練習します。


チェックをする人は、チェックリストを見ながら、CPRの大事なポイントを意識し、人の手技を見ていきます。こうすることで、客観的に指導的な視点で蘇生行動を見ることができるようになります。

自分がやるときには夢中になってしまい、余裕がありませんが、このようなオブザーバー役割を与えることで、人の行動から学んでもらおうという意図です。


このようにチェックリストを作り、観察を行なう第三者を立てることで、振り返り(デブリーフィング)を自分たちで進めていけるので、インストラクターに依存する学びとは別の次元での学習効果が期待できます。

少ない人数のインストラクターで大人数を教えなければいけないときにも応用できるテクニックです。



参考まで、この練習は実践へ向けての応用を意識しているので、次のような課題を出しています。

1回目:AEDを持ってくる人は自分でAED操作ができて、胸骨圧迫もできる
2回目:AEDを持ってくる人はAED操作法を知らない、胸骨圧迫はできるが下手
3回目:AEDを持ってくる人はAED操作を知らない、胸骨圧迫も練習したことない

このような課題で、第二救助者に自由な発想で演技をしてもらいます。おどおどしていてなかなか手が出せないとか、圧迫が遅く、浅いとか。

第一救助者はその様子を見て、胸骨圧迫を行いながら声をかけ、なんとか協力を得つつ、できる限りで有効な二人法CPRに持っていく。


この応用練習について、Facebookで次のような感想を頂きました。

「この場面すごく充実した時間でした。CPRとAEDをつかった講義は単純になりやすいけれども、指導者の講義の運びかたですごく興味深いものになることを実感しました。

グループで振り返りをすることで、自分の行動が違った角度からも評価されたりして…嬉しかった!これからも魅力的な講習を楽しみにしています。私も職場でCPRとAEDの講習から始めてみます。」



すっかりと形骸化した雰囲気もある心肺蘇生法講習ですが、工夫次第では魅力的で実践的なものになり得ます。

ポイントはインストラクターが教えすぎないこと!

こういったノン・テクニカルな部分は正解、不正解はありません。受講者が問題にぶつかり、自分で考えて行動すること、フラットな立場での他の受講生からの意見を聞いてさらに自分で考え、試してみることに意義があります。

この場面で、インストラクターが「こうしましょう」と、"正解"を示すのは、学習様式としてあまり適切ではないと考えます。

以上、参考になりましたら。




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2012年10月05日

ファミリー&フレンズCPR 〜成人と小児を思春期で分ける理由〜

前回のブログエントリー、ファミリー&フレンズCPRコース冒頭の「用語の定義」に関する続きです。今回は「成人」の定義と、その背後にある蘇生科学の仕組みについて。


ファミリー&フレンズCPRコースDVDは、成人・小児・乳児にパートがわかれていて、任意の部分だけ再生できるようになっていますが、恐らくみなさんがいちばん目にするのは「成人のハンズオンリーCPR」のパートだと思います。

ファミリー&フレンズCPRを【G2010】では、成人に対しては人工呼吸は行わない胸骨圧迫だけの蘇生法(=ハンズオンリーCPR:Hands only CPR)となっています。

このハンズオンリーCPRが適応となるのは、「成人」だけです。

小児と乳児には引き続き人工呼吸も含めた蘇生法が推奨されています。

そのため、コースの冒頭でハンズオンリーCPRが適応となる成人の定義を説明しているわけです。

成人という言葉は原語ではAdultですが、蘇生に関しては社会通念とはちょっと違った定義がされているので注意が必要です。

成人Adultと小児Childの境目は思春期です

日本語版のビデオでは、「思春期の終わりを迎えた」というやや微妙な表現をしていますが、理屈を理解すればさほど言葉には惑わされないはずです。

ここで言う思春期以降というのは、人間としての体の発育の完了を意味しています。

というのは、子どもの心停止の原因の原因がなにか、というのがキーポイント。

子どもに多い心停止の原因は呼吸のトラブル。これはぜひ覚えておいてください。

子どもの場合は、呼吸ができなくなって、そのうち心臓も止まってしまうというパターンが多いと言われています。

故に子どもの蘇生では、発見時にはすでに血液中に溶け込んだ酸素を使い切っている可能性が高いため、人工呼吸も併せた胸骨圧迫が有効とされています。

なので、小児・乳児、つまり子どもには胸骨圧迫と人工呼吸を30:2で行う蘇生法が推奨されています。



子どもに呼吸のトラブルが多いのは未発達な呼吸器官に起因しています。心臓に比べて成長が遅い呼吸器官が成長しきって完成すれば、子ども特有の呼吸器系のトラブルは減ります。

ということで、思春期以降の人(体の発育が完成した人)が倒れていた場合、呼吸器系ではなく恐らく心臓のトラブルが原因だろうと推察されるわけです。

心臓のトラブル、端的に言うと心臓突然死の原因である心室細動という不整脈ですが、これは突発的に発生して、あっという間に意識を失って卒倒します。

なので、成人の心停止は血液中には酸素がまだたくさん溶け込んでいるので、胸骨圧迫をして血液を巡らすだけでとりあえずどうにかなる。(=ハンズオンリーCPR)

ということで、大人と子どもで最大公約数的に心停止の原因を分けて、それに合わせて蘇生法を変えているわけです。

この部分はよく混乱する部分ですが、この理屈を理解すると、きっと忘れないと思います。



補足:日本の蘇生ガイドライン2010では、この成人と小児の区別を撤廃して、ユニバーサル化するという判断を取ったため、日本の市民向け講習では小児と成人は区別されません。通報のタイミングも大人と子どもで違うのですが、その点も日本の講習の中では言及されなくなりました。

なお、子どもを持つ親や保育士など子どもの専門家には、医療者向けプロトコルが適応され、小児に特化した蘇生法を修得することが望ましいとされています。



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2012年10月03日

ファミリー&フレンズCPR開催のコツ 〜意識ではなく"反応"確認〜

ファミリー&フレンズCPRのファシリテーターガイドとDVD、発売からだいぶ時間も経ちましたので、買ってDVDを見た方、また実際に講習会を開催された方も少なくないかもしれません。

ビデオの冒頭で「用語の定義」があるのも、今回のガイドライン2010教材からの新しいポイントです。今日はこの部分を少し解説したいと思います。


■ 反応とは?

傷病者の肩を叩きながら「大丈夫ですか?」と呼びかけたとき、私たちは何を見ているのでしょうか?

それは「反応」の有無です。「意識」の有無ではないというのがポイント。

意識はなくても、呼びかけ刺激に対する「反応」が見られれば、少なくとも心臓は止まっていないと判断できます。

その「反応がある」とはどんな状態なのでしょう? 返事がある、ということの他に、例えば呼びかけに対して目が開けば、それは反応ありです。顔をしかめるというのも。

とかく反応は目元に出やすいはずです。全身麻酔をかけるときも睫毛(しょうもう)反射といって、まぶたの動きに着目します。なので、反応の確認は必ず顔を見ながら。

救急対応初期評価のこの段階で疑うのは最悪の事態、つまり心停止です。なので、「意識」ではなく「反応」なのです。

勉強している人は、ここで「意識レベル」という医学的な概念を持ってくることもありますが、ここで重要なのは心停止ではないかという視点。そこは明確に分けたほうがシンプルです。



余談ですが、心停止の時は脳血流が途絶えることから手足がピクピクと動く痙攣発作を起こすことがあります。痙攣発作は胸骨圧迫を初めて脳血流が再開したときにも起きることがあります。また死戦期呼吸という顎のあたりが動く心停止後の反射運動もありますが、これらは無秩序に起きるもので、呼びかけ刺激に対する「反応」ではないという点にも、少し注意が必要かもしれません。



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2012年09月17日

ファミリー&フレンズCPR開催のコツ 〜学習に集中させる〜

ファミリー&フレンズCPR講習は、誰でも開催できるボランティアベースのプログラムですが、まがりなりにもAHA(アメリカ心臓協会)のプログラムです。

AHAの心肺蘇生法講習が他と違うポイントのひとつは、インストラクター・コンピテンシーという成人学習の理論にもとづいて、効率よく学べるように教材設計されていることにあります。

その基本は学習環境を整えて、受講者がストレスなく学べるように心配りをすること。

このポイントのいくつかは、ファミリー&フレンズCPRファシリテーターガイド
にもかいつまんで書かれていますが、大事なポイントなので、ここでもまとめておきたいと思います。

ファミリー&フレンズCPRファシリテーターガイド



1.受講者が来たら声をかけ、暖かく迎え入れる
 
 受付を作って会場に入った受講者がどこに行ったらいいか戸惑うことがないような配慮を。また開始まで待つ場所、席、荷物置きなどをきちんと案内しましょう。学びたいと思ってきた意欲を増強させるような建設的な会話も有用です。

2.ビデオ画面とマネキンの位置の調整
 
 ビデオを見ながら、それを真似して練習します。画面が高すぎると首がつかれます。また複数のマネキンを使う場合、2列以上になるときは、前の受講者の背中で画面が見えないということがないように、マネキン位置を調整します。

3.開始の挨拶でいうこと

 ・終了予定時間
 ・途中に休憩時間があるかどうか
 ・トイレや飲み物の自動販売機の場所の案内
 ・膝や腰、肩などに不調がある人はいないか
 ・練習量がありややハードなので、できる範囲で頑張ってほしい点
 ・画面を見ながら、真似して練習するという一風変わったスタイルである点

 成人学習の理論から、学習者が学習に集中する環境を作ることがファシリテーターの役目です。そのため、受講者の気がそれるような要因を排除する必要があります。例えば「おなか空いたなぁ、何時に終わるんだろう?」「トイレ行きたいけど、、、」「腰がつらい」など。

講習開始前の案内に、これらを先回りして伝えておくことで、学習者の集中を助けることができます。

学習は学習者の中で起きます。

つまり、学習者はビデオ教材を通して自ら学びます。

教えこむ、のではないのです。

自主的な学びを支援するのがインストラクター(ファシリテーター)の役割、これはファミリー&フレンズCPRのにかぎらず、すべてのAHAコースの基本コンセプトです。


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ファミリー&フレンズCPR開催のコツ 〜AEDは"教えない"、体験させる〜

ファミリー&フレンズCPRのDVDを見た人は、おやっと思うかもしれません。

AED練習はどうするのだろう??、と。

そう、ビデオに合わせて練習をするFF-CPRのビデオには、AEDの使い方は説明だけで、練習する場面がありません。

なぜ、練習がないのか? の答えはビデオの中のインストラクターが説明しています。


「AEDの使い方はとても簡単です。練習する必要がないほどです」


そう、AEDは誰でも簡単に使える、練習は必須ではないのです。

考えてみれば当たり前の話かもしれません。

AEDは講習を受けていない人でも誰でも使えることになっています。だからこそ、デパートのエレベータの脇とか、駅のホームなど誰もが手が届く場所においてあるわけです。

誰でも安全に使えるから、医師や救急救命士のような免許を持っていない人でも使っていいと認可されてきた点を私たちは忘れていたのかもしれません。

そんな原点に帰ったのが、ガイドライン2010準拠のファミリー&フレンズCPRプログラムです。これまでの指導法の問題点を改善した結果と考えてください。

私達も、ファミリー&フレンズCPRビデオに合わせての全体練習の後、窒息解除の前にビデオを止めて、AEDが届きました、という形で追加練習を入れることもあります。

しかし、その時、インストラクターが改めてAEDの操作法を説明したり、デモンストレーションすることはありません。

ガイドライン2010時代の新しいAED指導法のポイントは2点。

・電源スイッチを入れる
・音声指示に従う

あまり説明をしすぎると、操作を暗記してしまい、「音声指示に従う」という大事なポイントがスポイルされてしまいます。

ユニバーサルな指導としては、何より「音声指示に従う」ことが重要です。機種によって若干ではありますが、操作手順と音声メッセージが異なるからです。

ですから、いきなりAEDを渡して使ってもらいます。電源スイッチを入れた後は、「指示をよく聞いて!」と促し、自分で判断して行動してもらいます。

特定機種のAEDを頻繁に使う人には操作を反復練習させることも意味があるかもしれませんが、一般の人には、操作を覚えさせるよりは、「音声指示に従う」という"態度"を育てることが心肺蘇生法教育には必要です。

日本では心肺蘇生法講習は、しばしばAED講習と言われるように、AED抜きには語れない現状があります。

受講者の期待に応える意味でもAED練習を入れる意義はあると思います。

その際に、教える側のスタンスを少し変えてみると、より実行性を考慮した効果的なAED講習となるでしょう。


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2012年09月06日

ファミリー&フレンズCPR開催のコツ 〜教えようと思うな!〜

ついに ファミリー&フレンズCPR【日本語版】のDVD が発売になりましたね。

AHAファミリー&フレンズCPRファシリテーターガイドwithDVD


これで誰でも気軽にAHA教材による質の高い心肺蘇生法講習が展開できるようになったわけですが、アメリカ心臓協会がこれまで培ってきた教育メソッドへの理解がないと、ちょっと勘違いしやすい部分もあるかと思いますので、補足をいくつか。

まずは、、、

教えようと思うな!

という点。

ファシリテーターガイドにも明記されていますが、AHAインストラクター以外の人がファミリー&フレンズCPRのDVDを使って講習会を開催する場合は、「指導」をすることは求められていません。また質問に対して答える必要もない、というのが基本スタンスです。

AHAインストラクター以外で、ファミリー&フレンズCPRコースを開催する人のことを、「ファシリテーター」と呼んでいます。公認資格を持ったインストラクターとはちょっと別枠で考えられています。ファシリテーターの役割は受講者を集めて機材を準備して会場セッティングをしてビデオを再生すること。

受講者はビデオ教材を見て、自己学習、自己練習する、というのが基本的な図式になります。ビデオの中のインストラクターの説明を聞き、ビデオの中のデモンストレーションを見ながら、真似をしてCPRの練習をする。会場にいるファシリテーターは、その学習プロセスをセッティングするだけなのです。

だから、ファシリテーターマニュアルには、ファシリテーターはCPR講習を受講したことがない人でも構わない、と書かれているわけです。

ここが基本ベースになっていることを忘れないでください。

おそらくファミリー&フレンズCPRのDVDを使って講習会を開催しようとする人の多くは、これまでなんらかの心肺蘇生法講習の指導に携わったことがある方だと思います。

大抵の場合、指導者は語ることが求められてきたと思います。教えなくちゃ、という意識が強いかもしれません。

しかし、AHA教材はそうではないのです。もちろん指導者が教えてはいけない、ということではありませんが、まずはAHAの基本教育理念を知るという意味で、ぐっと我慢して、いちどビデオ教材にまかせて進めてみてください。

そうすると、心肺蘇生法講習に何が必要でなにが不必要か、またどれくらいの時間をかければ人はCPRをマスターできるのか、が意外な形で見えてくるはずです。

そこをおさえた上で、自分なりのアレンジを考えてみましょう。


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