【ブログ移転のお知らせ】

2017年10月12日をもって、独自ドメインへ移転しました。

【新】BLS横浜ブログ|https://blog.bls.yokohama

10秒後に自動的に新サイトへジャンプする設定になっていますが、
うまく飛ばない場合は上記リンクをクリックお願いします。(2017.10.12)

2017年07月22日

AEDが「ショックは不要です」というとき

心停止は大きく分けて2種類あります。

AEDの電気ショックが必要な心停止と、電気ショックが不要(有効でない)な心停止です。

これを判断してくれるのがAEDですから、心停止と認識したら、可能であればすべての症例でAEDは装着するべきです。

つまり、市民向けプロトコルでは、「反応なし+10秒以内に正常な呼吸であると確信できない場合」ですし、医療者向けで言ったら、「反応なし+呼吸なしor死戦期呼吸+脈なし」であれば、CPRを開始しつつ、AEDがあれば直ちに装着します。


AEDの電気ショックのことを専門用語では「除細動」といいます。文字通り、心臓の細かい動き(震え)を取り除くのがAEDです。

心臓が細かく震えている心室細動や(無脈性)心室頻拍を検出した場合に限り、「ショックが必要です。充電します」と言って、電気ショックが実行されるようになっています。

もう一方のタイプの心停止、つまり心停止の中でも心静止(心電図がピーッと一直線の場合)や、なんらかの原因で血圧が低すぎて有効な血流がない状態などの無脈性電気活動(PEA)と呼ばれるタイプの場合は、心停止の原因が心臓の震えではありませんから、当然、AEDは「ショック不要」と判断します。しかしこれも心停止なのです。

ショック不要=心停止じゃない(生きている)というわけではない点、注意して下さい。

AEDは心電図の解析しかできませんから、生きているか心停止かの判断は人間が行わなければならない「仕様」になっています。

そのためAEDを装着する条件が規定されているわけです。


※市民向け: 「反応なし+呼吸なし」
※医療者向け: 「反応なし+呼吸なし+脈なし」


この点は、AEDの取扱説明書(添付文書)で規定されていますし、救命講習でもきちんと教える必要がある部分です。





「反応なし+呼吸なし」ということで、心停止と判断して、AEDを装着して解析させた結果、「ショックは不要です」と言われたのであれば、それは電気ショックが有効ではないタイプの心停止だということです。

この場合、除細動(AED)では救えないということですから、できることと言えば、救急車が到着するまでの間、できるだけ「質の高い」心肺蘇生法を継続することです。

目の前で卒倒した突然の心停止(心原性心停止疑い)の場合以外は、体の中の酸素が枯渇している状態ですから、もし人工呼吸をまだ開始していないのであれば、なんとか感染防護具を手に入れる努力をして、人工呼吸を始めるべき、といえるでしょう。





posted by BLS横浜 at 23:47 | TrackBack(0) | 心肺蘇生の仕組み | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年06月05日

窒息解除法【反応なしの場合】のメカニズム

ガイドライン2015のAHA-BLS講習で変わったところといえば、蘇生科学の解説が丁寧で詳細になったというところです。

旧G2010版ではハートセイバーコースにしか入っていなかった死戦期呼吸や心室細動の動画も盛り込まれましたし、古典的手技とも言える窒息解除についても、初めてそのメカニズムの説明が載りました。

ハイムリック法(腹部突き上げ法)で気道異物が解除できずに意識を失った場合は、「胸骨圧迫からCPRを行う」のが正解ですが、その理由が明かされています。

airway-obstraction.jpg


意識を失うと気道も含めて筋弛緩するため、隙間ができる可能性がある。そこに胸骨圧迫で間欠的に陽圧をかけることで異物が口腔内に押し出させる可能性がある。だから30回の圧迫を先に行い、そのあと口腔内を確認してから人工呼吸を行う。

このあたりはインストラクターでも知らない人が多かった印象がありますが、G2015ではプロバイダーレベルでの常識になりますね。




posted by BLS横浜 at 23:46 | TrackBack(0) | 心肺蘇生の仕組み | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2015年01月06日

心肺蘇生法のしくみ

心肺蘇生法(CPR)は、自発呼吸が停止し、心臓の拍出機能が停止もしくは著しく停止した人に対して行う救命処置です。

人が生きるためには酸素が必要です。大気中の酸素を体の細胞に届ける機能を代行するがCPR、と考えてみてください。

酸素の流れで考えます。

自発呼吸が止まっているから、強制的に肺に空気(酸素)を送り込むのが人工呼吸です。その名の通りですね。

肺に達した酸素は、肺胞から血液中に血液ガスとして溶け込みます。

血液に酸素が溶けこんでも、それが循環しなければ、体の各細胞には届きません。
そこで胸骨圧迫です。

血液のポンプ機能が停止した心臓に代わって、胸骨の上から強く速くおして、血液の流れを生み出します。

こうして、はじめて大気中の酸素が体の各細胞へ届けられるのです。

なので、基本的には、


人工呼吸 → 胸骨圧迫


という流れが自然です。

しかし、最近は、


胸骨圧迫 → (人工呼吸)


という図式が定着してきています。

逆ですよね? しかも、人工呼吸は( )付き。省略してもよいという論調。

なぜでしょうか?

ヒントですが、「人工呼吸をしなくても、血液中に酸素が溶け込んでいる状況なら」、と考えれば、納得いきませんか?

心肺停止状態が発生する"なりゆき"を考えてみます。

もし、突然に心臓の機能と呼吸機能が同時に停まったとしたら、、、、

直前まで普通に呼吸をしていたわけですから、血液中には酸素が溶け込んでいますよね?

問題は、心臓の血液ポンプ機能が停まったから、血液中の酸素が細胞に届けられない。

そんな状況だったら、人工呼吸で手間取るより、すぐに胸を押して、血液循環を生み出すほうが大切。

これが最近、よく言われる胸骨圧迫のみのハンズオンリーCPR(Hands only CPR)の基本原理です。




しかし、もう一歩踏み込んで考えてみてください。

血液中に酸素が溶け込んでいる状態だからこそ、胸骨圧迫だけでいい。

しかしもし、血液中の酸素が使い果たされた状況で起きた心停止だったらどうでしょう?

たとえば、水に溺れて息ができなくて心肺停止になった状況とか、呼吸困難で意識を失って心肺停止になったとか。

この場合、体の中の酸素を使い果たしてしまったから、心臓まで止まってしまったと考えられます。

人が生きるしくみは、大気中の酸素を体の中の細胞に送り届けること。

胸骨圧迫だけで血液循環を促しても、送り届けたい酸素が血液中になければ、あまり効果的でないのはわかりますよね?

つまり、心肺蘇生法のしくみを考えた時に、Hands only CPRよりは、人工呼吸もきちんと行った蘇生法のほうが好ましい状況もあるのです。

世の中の一般的な統計では、心臓突然死、つまりが心臓と呼吸機能が同時にとまるケースが最も多いと言われ、社会的に問題になっています。

そこに着目すれば、Hands only CPRという誰でもできる簡便な蘇生法の普及が劇的に効果が期待できます。

しかし、子どもに多い呼吸のトラブルに起因した呼吸原性心停止や、プールや水辺の事故に対応する可能性が高い職業人にとっては、胸骨圧迫だけの心肺蘇生法では不十分かもしれない、とも言えます。

人工呼吸は技術的に難易度がやや高く、体液からの病気が感染するリスクや、心理的抵抗など、ややハードルが高いのは事実です。

しかし、呼吸のトラブルが想定される専門職であれば、素人レベルで言う「難しさ」は物ともせず、目の前で起きたことには適切に対応するという気概でしっかりと訓練をしてほしいと思います。



posted by BLS横浜 at 21:42 | TrackBack(0) | 心肺蘇生の仕組み | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2014年12月30日

喉にモノが詰まったときの対応

喉にモノが詰まったときの解除法の基本は、咳をするように促すこと。

自分で咳ができない完全閉塞なら、下の方を向かせて背中を強く叩いてあげましょう。

ダメだったら、詰まった人の後ろに回って、両手で拳を作ってヘソの少し上あたりを強く圧迫する腹部突き上げ法を。ハイムリック法とも言います。

背中を叩いても、お腹を圧迫しても詰まったものが取れなくて、意識を失ってしまったら、次にやるのは「胸部突き上げ法」です。床に寝かせて、胸骨圧迫(心臓マッサージ)とまったく同じことをやります。肺を勢いよく圧縮することで、空気を押し出して詰まったものを飛ばそうとする解除法です。

反応(意識)がなくなってからの窒息解除法は「CPRをしましょう」と表現されることもありますが、「大丈夫ですか?」から始める必要はありません。いきなり胸骨圧迫をはじめてください。(もちろん他に人がいれば通報の依頼を!)

ヘルスケアプロバイダーレベルでBLSを学んでいる人は、反応がない窒息者への解除では、決して脈拍を取らないように!、というのが注意点。

BLSのアルゴリズムに従って行動した場合、「反応なし+呼吸なし+脈あり」となりますので、《補助呼吸》に行き着いてしまうからです。窒息解除に必要なのは、CPRの中でも人工呼吸ではなく、胸骨圧迫(胸部突き上げ法)です。


窒息解除における胸骨圧迫は、血流を生み出すのではなく、詰まった異物を押し出すのが目的だという点を理解しておいてください。




posted by BLS横浜 at 14:45 | TrackBack(0) | 心肺蘇生の仕組み | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年04月09日

心肺蘇生法における年齢区分の違い

※以下、AHAガイドライン2010での市民向け/医療者向け心肺蘇生法、またはJRCガイドライン2010の医療者向け勧告の内容なのでご注意ください。


●大人と子どもの蘇生法は違いますが、その区分は思春期

●AEDの小児用パッド(システム)の適応は8歳未満 (JRCガイドラインでは就学年齢未満)



心肺蘇生法を勉強すると、このふたつの年齢区分が出てきます。

そこでたまに質問されるのは、

「すごく小さな子どもみたいな体型の大人がいた場合、どうしたらいいですか?」
「大人みたいな大柄な6歳の子、どうしたらいいですか?」

インストラクターの皆さん、こんな質問を受けたらどう答えますか?

年齢区分の意味合いの違いを理解していないと、正しく答えることができないかもしれません。

CPR開始が優先か、通報(AED手配)優先か、という蘇生手順の違いは、思春期を迎えたかどうかで区別しますが、これは体の発達、特に呼吸器系の完成の有無を意味しています。つまり、子ども特有の呼吸原性心停止リスクが残っているかどうか、という点が問題となります。

ですから、いくら体格が小さくても、年齢が思春期を越えていれば、一般に大人向け蘇生法が適応されます。

一方、AEDの小児用パッドの適応は、体重で計算されます。小児用パッドはショックのエネルギーが1/3の50Jに減衰されるようになっています(フィリップス社のFR2の場合)。G2005の時代には、体重25キロ未満は小児用パッドという言い方をすることもありました。小児の場合、手動式除細動器を使う場合は体重1キロあたり2Jで計算されます。ですから、医学的に判断すれば、大型な子どもの場合は成人用パッドを使った方がいい場合も考えられます。

ただ、AEDの場合は医学的な判断のほかに、法的な根拠も加味しなければなりません。薬事承認を得た医療器具ですから、その添付文書に従った操作が求められます。そこで基準として就学年齢未満とされているのであれば、医師以外はそれに従うべきです。

日本版JRCガイドラインと米国版AHAガイドラインで、小児用パッドの適応基準が異なっていますが、薬事承認も含めた政治的理由によるもので、医学的に言えば、8歳であっても就学年齢であっても、絶対的な意味はありません。そういう「お約束」という理解が妥当でしょう。

具体的に、どう答えるかは質問してきた相手の立場にもよりますので、一概には言えませんが、このような根拠を知っていると、応用が聞くのではないでしょうか?


追記:消防や日本赤十字など、日本版JRCガイドライン2010で学ばれる方は、基本的に子どもを区別する概念が廃止されていますので、ご注意下さい。"ユニバーサル化"ということで、日本標準の市民向けの教え方では、すべて大人向けのやり方に統合されています。





posted by BLS横浜 at 09:04 | TrackBack(0) | 心肺蘇生の仕組み | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年03月28日

30:2−人工呼吸時に胸骨圧迫を止める理由

心肺蘇生法の理屈を理解するワークショップ・スライド4

人工呼吸と胸骨圧迫を同じタイミングで行なうと、よくないことが起きます。

イメージしてみてください。胸を押せば肺から空気が押し出されます。そのとき、同時に人工呼吸をしてしまうと、口から肺に向かって入る空気とぶつかります。

肺から出る空気と口から入る空気がぶつかったら、どこに逃げるか?

食道、つまり胃です。

胃膨満となり、なにかのタイミングで胃の内容物と合わせて逆流、嘔吐してしまいます。すると以後のCPRの継続が困難となり、助かる可能性が低くなります。

これが、30:2とか15:2といった「同期式」でCPRを行なう理由です。


しかし、高度な気道確保、つまり気管挿管がされれば、胃に空気が入るリスクはなくなりますし、嘔吐しても人工呼吸にはまったく影響されないので、胸骨圧迫の手を止める必要はなくなります。つまり、非同期式。

胸骨圧迫の大事なポイントのひとつ、「絶え間なく」を文字通り実現できるのです。




posted by BLS横浜 at 10:12 | TrackBack(0) | 心肺蘇生の仕組み | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2013年01月27日

心停止対応「倒れるのを目撃」したか否かの違いって何?

横浜本郷台でBLSヘルスケアプロバイダーコース進行中です。

コース開始前に受講者さんから質問がありましたが、やはり小児の部分がわかりづらいようです。

テキスト29ページの「救急対応システムに出動を要請するタイミング」の部分ですが、「心停止を目撃」したか否かによって対応を変えなさいと書かれていますが、この意味がイメージしづらい模様。

これは、人が目の前で突然卒倒したのか、それともすでに倒れているのを発見したのか、という違いを意味しています。

胸を押さえていきなり倒れた。これは突然の心停止を疑います。もっと言うなら心室細動(VF)という致死性不整脈。この不整脈を止めるには除細動(AEDによる電気ショック)が必須ですので、CPRを開始するよりAEDを手配することが優先されます。

一方発見時にすでに倒れていた場合、原因がわかりません。その場合、思春期前、すなわち体が完成する前の子どもだったら"呼吸原性心停止"を疑います。子どもの心臓突然死は珍しく、逆に多いのは呼吸停止に起因する心停止や"ショック"から心停止に至ることが多いことわかっているからです。

もし呼吸停止を経て徐脈になって心静止(いわゆるフラットライン)になった場合、心停止として発見した時点で、体の中に酸素は残っているでしょうか?

いうまでもなく、すでに重篤な酸欠状態。

ですからAEDを手配するより、なにはさておき人工呼吸を含めたCPRで体の細胞、特に心筋細胞と脳細胞を酸素化してあげることが必要なのです。だから5サイクル(2分間)のCPRを優先して、もしその場に自分一人しかいなかったら、そのあとで119番通報とか近くにあるのがわかっていればAEDを取りに行きます。

このように、心停止の原因によって、対応の優先順位が変わってくる、そしてその判断のポイントは、目の前で卒倒したか、それともすでに倒れていたか、ということです。







posted by BLS横浜 at 14:07 | TrackBack(0) | 心肺蘇生の仕組み | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2012年12月29日

「心肺蘇生法の仕組みを理解する」ワークショップ開催報告

先日開催した「心肺蘇生法の仕組みを理解する」ワークショップには、全国からたくさんの人にお集まりいただきました。

もともと定員16名の予定でいましたが、あまりにキャンセル待ちが多かったので、会場が手狭になるのを覚悟で枠を拡大。26名の方にご参加いただきました。(締め切りのため今回、参加いただけなかった皆様、申し訳ありません!)

皆様からはたいへん好評いただけたようなので、次回3月31日(日)、同じかながわ県民センターで同じ内容の無料セミナーを開催するつもりでいます。

前回、ご参加いただけなかった方は、どうぞ次回の日程のマークをお願いします。


さて、「心肺蘇生法の仕組みを理解する」ワークショップの内容を、次回のためにネタバレしない程度にご紹介しようと思います。

4名ずつのスモール・グループディスカッション形式で進めていきました。

テーマを提示して、5分〜10分程度でフリーディスカッション。その後、解説をしていくというスタイルです。

最初のテーマはこんな感じ。

心肺蘇生法の理屈を理解するワークショップ・スライド1  心肺蘇生法の仕組みを理解するワークショップ・スライド2

ガイドライン2005時代に、こんな場面に遭遇したら、皆さんは何ができましたか?

机上の空論ではなく、皆さんが現実にできることを考えてみてください。

今だったら、きっと心停止を認識してさっさと胸骨圧迫が始められると思うんです。

でもたった3年前ですが、G2005時代にはそこまで辿りつけなかったかもしれない。

これがガイドライン改訂の最大のポイントだと私は思っています。ABCからCABとか、そんな枝葉の話ではなく、蘇生ガイドラインはimplementation(実施・実行)という新たなキーコンセプトにもとづいて、すべてがチューンナップされているのです。

それにしても、参加者の半数以上が、日頃から感染防護手袋を携帯しているという事実は、さすが意識が高い方たち! でした。


ガイドライン2010の本質を再確認したあとは、質の高いCPRのキーポイントを復習。その背後にあるエビデンスを理解していただきました。

それを踏まえた上でのまとめのディスカッションのテーマはこちら。

心肺蘇生法の理屈を理解するワークショップ・スライド3

ガイドライン2010になって、胸骨圧迫の強さは「少なくとも5センチの深さ」、速さは「少なくとも1分間に100回のテンポ」で、ということになりました。

しかし、この定義の本質的な意味はなんでしょうか?

この深さと速さを文字通り覚えることに意味があるでしょうか?

とすれば、私たちは受講者にどう指導していけばいいのか?

きっとここにG2010時代のCPR講習の本質があるはず。



また、こんなやや難しいテーマを入口にして、胸骨圧迫によって血流を生み出す仕組みと、自己心拍再開の仕組みを考えてもらいました。

絶え間なくというわりには30:2なのはなぜ? 人工呼吸の時、胸骨圧迫を止めるのはなぜ?

人工呼吸の時、なぜ胸骨圧迫の手を止める必要があるのか?

これは、胸骨圧迫によって身体の中で何が起きているのかをイメージできていないと答えられないと思います。その模式化された心肺蘇生のメカニズムの理解が質の高いCPRの実施につながるのでは? という仮説。



最後は、「心停止」の意味を考えてもらいました。

ショックが有効な心リズム:心室細動、無脈性心室頻拍、無効な心電図:無脈性電気活動、心静止

一言で心停止といっても、電気ショック(除細動)が有効な場合と無効な場合がある点を理解しておくことは重要です。AEDは心臓を止める道具である点、AEDだけでは人は助からない理由などを理解していただきました。


結論だけを言えば、すでにこのブログやFacebookページで何度も書いてきたことばかりですが、自分の頭で考え、みんなでディスカッションすることで理解を深めて、自分のものにしていく。

そんなワークショップでした。

参加後のご意見として、他の人たちと意見交換ができたのが良かったという声は複数いただきました。

「学ぶ」とは何なのか?

そんな点にも思いを馳せて頂く機会となれば幸いです。


次回、3月31日(日)の参加申し込みは1月15日に開始させていただく予定です。

次回は定員をやや多めに設定するつもりですが、参加ご希望の方は早めのお申し込みをお勧めします。






posted by BLS横浜 at 13:32 | TrackBack(0) | 心肺蘇生の仕組み | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2010年07月04日

乳児・小児・成人/心肺蘇生法の年齢区分

「子どもへの心肺蘇生法を勉強したいんですけど・・・」

そんなご相談を受けることがよくあります。

2004年のAEDの市民使用が解禁されて依頼、日本でもAED講習が広く開催されるようになっていますが、そこで学ぶ心肺蘇生法のほとんど大人(成人)を対象としたものです。

ところで、ここでいう大人(成人)というのは、何歳以上のことを指しているか、ご存じでしょうか?

実は、市民向け救急法でいう大人(成人)とは、8歳以上を意味します。

8歳というと、小学校2年生で、まだまだ子どもですが、大人と同じやり方でOKなのです。


8歳未満の場合は、救急法では「小児」に区分されます。

小児は1歳以上8歳未満。

この場合、少しだけ大人(成人)と違う所があります。

1.AEDより人工呼吸を含んだCPRが優先される(2分間のCPR後にAEDを使う)
2.片手法胸骨圧迫

詳しくは、講習を受けていただきたいのですが、まあ、細かな違いなので、難しく感じるようでしたら、大人とまったく同じやり方でも構いません。


1歳未満は「乳児」に区分されて、成人・小児に比べてもうちょっとやり方が違ってきます。

赤ちゃんは体が小さいので両手の手のひらを使って胸骨圧迫するのは無理があります。そこで二本指を使って行います。

また「大丈夫?」と方を叩きながら反応を確かめるのも、赤ちゃんは首が据わっていませんから、足の裏を刺激して反応をチェックします。

後は口対口人工呼吸では、鼻をつままず、鼻と口をいっぺんに覆って呼気を吹き込みます。

さらには、喉に物が詰まったときの解除方法も、大人とはずいぶんと違います。

このあたりは講習会に来ていただければ、赤ちゃんの蘇生練習用マネキンを使って練習し、体で覚えていただきます。



このように、心肺蘇生法は、成人、小児、乳児に分れています。

アメリカ心臓協会のDVD教材を使った心肺蘇生法講習は、医療者向けのBLSヘルスケアプロバイダーコースでは乳児まで含めた蘇生法をカバーしていますが、ハートセイバーAEDコースやファミリー&フレンズCPRコースでは、乳児はオプション扱いになっています。

その時々の会場確保時間の関係から、乳児オプションを行う場合と行わない場合があるので、子どもの救急法を勉強したいと考えている方はお申し込みの時、注意していただけたらと思います。


余談ですが、1歳未満の乳児の中でも産まれた直後の新生児はまったく別の特別な蘇生法が行われます。

新生児は、母親の体から地上に生まれ出て、そこで初めて呼吸を開始します。

新生児に蘇生が必要になる場合というのは、ほとんどがこの未熟な呼吸機能の問題なので、人工呼吸の必要性が特別に高いのです。

そのため、通常の胸骨圧迫と人工呼吸の比率である30:2ではなく、3:1という特殊な比率で蘇生が行われます。

これは産まれた直後に分娩室や手術室(帝王切開時)で行われる蘇生法なので、医療従事者の中でも産科医や助産師、麻酔科医、手術室看護師などの限られた人にだけ必要とされる特殊技術です。そのため市民向けには教えていません。

アメリカではこの新生児蘇生法を教えるNRPというプログラムが、また日本でも日本周産期・新生児医学会主催の新生児蘇生法(NCPR)講習会というのがあります。

後者のNCPR講習に関しては、今後、BLS-AED.net横浜でも開催(医療従事者向け)していきたいと考えています。
posted by BLS横浜 at 01:37 | 心肺蘇生の仕組み | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2009年08月23日

心肺蘇生の仕組み その1 胸骨圧迫

心肺蘇生法(CPR)とついつい一言で言ってしまいますが、心肺蘇生法っていったい何なんでしょう?

胸骨圧迫(心臓マッサージ)と人工呼吸、それにAEDによる電気ショックが、心肺蘇生法なのですが、なんのためにそれらを行う必要があるのかという理屈はあまり詳しく説明されることがないかもしれません。

技術は体で練習して身につけるしかないのですが、理屈がわかっていれば手順で混乱したり迷うことも少なくなるはず。

そこでここでは、心肺蘇生の基本となる仕組み・理屈をお話したいと思います。



心肺蘇生法を実施しなければいけない状態というのはどんなときでしょう?

呼吸をしていなくて、心臓が動いていないとき = つまり、心肺停止のときですね。

自分で呼吸ができない状態になっているから、口から息を吹き入れて、呼吸を助けてあげる、心臓が停まっていて血液を全身に巡らすことができていないから、体の外から心臓を(間接的に)圧迫して、あなたの手で心臓の代わりをしてあげる、これが基本です。


さて、ここで問題です。

人工呼吸と胸骨圧迫(心臓マッサージ)、どっちがより重要だと思いますか?


ちょっと難しい質問だったかもしれませんね。

それでは、別の質問をします。

あなたは、何秒間息を止めることができますか?

10秒? がんばれば30秒くらいいけますか?

それでは、もうひとつ聞きます。

あなたは心臓を何秒くらい止められますか?




これが「人工呼吸と胸骨圧迫(心臓マッサージ)、どっちが大事か」という質問の答えです。


心臓が止ると数秒後には意識がなくなって倒れてしまいます。


実は皆さんもこれとよく似た体験をしたことがあるはずです。

立ちくらみとか、貧血で頭がクラクラしたり、倒れた経験ありませんか?

これが実は一時的な心停止に近い状態です。

急に立ち上がったりすると、脳に血が行かなくなって、脳からみたら心停止みたいな状態になります。

貧血で目の前が真っ暗になって倒れそうになる、、、


心肺蘇生中に皆さんが胸骨圧迫の手を止めると、その度に患者さんの体の中ではそんなことが起きているんです。

心肺蘇生中は、皆さんの胸を押す手が心臓なのです。

心臓が一瞬たりとも動きを止めずに拍動しているように、皆さんも絶え間なく胸を押し続ける必要があります。



もう一度、聞きます。人工呼吸と胸骨圧迫(心臓マッサージ)、どっちが大事ですか?


もう皆さん自信を持って答えられますね。



「胸骨圧迫です!」と。


ですから、BLS−AED.net横浜の講習会では、胸骨圧迫心臓マッサージをひたすら練習します。

これでもかってくらいにマネキン相手に練習してもらいます。

まるで筋トレをしているのかと思うくらいに胸を押してもらいます。


そうなんです、心肺蘇生法というのは実はスポーツと同じ。

体で覚えるものです。


ですから、心肺蘇生法を身につけるには練習に練習、さらに練習。


BLS−AED.net横浜の講習会では、練習量の確保に最大に気を遣っています。

ですから、1体のマネキンを10人近くで使い回すような講習は行いません。

プロとしての技術を身につける必要がある人には、一人に一体のマネキンを用意する、これがBLS−AED.net横浜のポリシーです。
posted by BLS横浜 at 23:10 | 心肺蘇生の仕組み | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする