横浜駅から徒歩5分の場所で、AHA-BLS-HCP、PEARS、ファーストエイド講習を開催しています。

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2016年05月08日

「G2015時代のBLSインストラクターを目指す」ワークショップ at 横浜

本日、横浜で開催した「G2015時代のBLSインストラクターを目指す」ワークショップには、4つのITCから15名の方がご参加いただき、終了しました。

ガイドライン改訂だけを見ると、AHA-BLSには大きな変更がないように見えます。しかし、プロバイダーコース教材を見ると、驚くほどの激変を遂げています。

キーワードはLife is Why。

Life is whyの謎を解け、という謎解き風(?)な展開での3時間でした。

結論から言ってしまうと、AHAガイドライン2015のEducationの章にも書かれているように、今回のガイドラインでは、インストラクショナル・デザインが全面に打ち出されており、カークパトリックのレベル3以上を目指す方向に転換されたということが大きいです。

learn and liveでは世の中、変わらなかった。

それはカークパトリックのレベル2の世界に限局した教育展開だったから。

ゆえに、シンプルさと教えやすさを犠牲にしてでも、リアルな世界とのつながりを作る必要があったわけです。それがLife is whyです。

技術習得のドメインでいうなら、認知スキルと運動スキルはAHAコースの十八番。

足りなかったのは態度スキルへのアプローチ。

それがリアルの追求と相まって、Life is whyに集約されたものと考えられます。

結論を書くと、こんなシンプルな話なのですが、それをG2015のBLSコース教材の映像を通して、またガイドライン変遷をたどりながら、考えていきました。

これだけ読んでも、いまいちピンとこないかもしれませんが、興味を持ってくださった方がいましたら、次回、5月29日(日)久留米での「G2015時代のBLSインストラクターを目指す」ワークショップへの参加をご検討いただけますと幸いです。





posted by BLS横浜 at 23:22 | TrackBack(0) | 蘇生ガイドライン2015のBLS/ACLS/PEARS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年05月05日

心停止認識の評価:反応確認であり、意識確認ではない点について

昨日、Twitter の上ですこし書いた点ですが、こちらにもシェアしておきます。

BLS手順において、「大丈夫ですか?」と尋ねながら確認するのはなにか?

それは「反応」の有無です。「意識」ではありません。

英語でいうなら、Responsiveであって、consciousnessではありません。

英語では、昔から、この単語が明確に使い分けられていますが、日本語になったときには、Responsive(反応)が意識と訳されてしまったり、成書では、反応と書かれているのに、指導員レベルで意識と言い換えられてしまうケースが散見します。


医療者レベルの理解でいけば、それほど大きな問題はないのかもしれませんが、市民向けのBLS指導ではこの違いをしっかり区別をした方がいいと思います。

医療の素養がない一般の人に、意識がないとはどういう状況か、と尋ねてみたら、どんな返事が返ってくるかを考えてみるとわかりやすいかもしれません。

例えば、「大丈夫ですか?」と呼びかけた時に、「うーん、、、」とかすかなうめき声をあげただけで、目を開かず、動かなかった、という場合、どうでしょうか? 意識なし、と判断する人が多いのではないでしょうか?
しかし、この状況はBLS手順で言った場合、「反応あり」であって、CPRは適応ではありません。

これが、反応でとらえた場合と、意識でとらえた場合の違いです。

医療者的に言ったら、JCS300以外はCPR適応外と判断できるかもしれませんが、そういうレベルの話ではなく、救命講習で教わった一般の方たちがどのように理解して、何をどうみて判断して、どう行動するか? という実質的な中身で考えるべきです。

ということで、絶対的な間違いとはいいませんが、CPR手順の中で「意識の確認」という言葉を使うのは不適切と考えます。

そこで、どのように指導すればよいのかという話になると、私たち指導員が「反応確認」という言葉を正しく使うことと、最初に、「反応」という言葉の概念を定義することが重要です。

先日、4月26日にリリースされた最新版の Heartsaver CPR AED Student Workbook の中では、その冒頭の3ページで下記のように定義されています。

You should know that during an emergency, it's possible that someone might become unresponsive. Here is how to decide if someone is responsive or unresponsive.

Responsive : Someone who is responsive will move, speak, blink, or otherwise react to you when you tap him and ask if he's OK.

Unresponsive : Someone who does not move, speak, blink, or otherwise react is unresponsive.

傷病者を軽く叩きつつ、大丈夫ですか? と声をかけたことに対する「反応」に着目します。その刺激に呼応して、動きや、発語、瞬きなどの目元の動き、その他の反応が見られた場合、「反応あり」つまり、心停止の兆候ではない、と考えます。

これを簡略化して「動きの有無」としてしまうと、正しくはありません。あくまでもこちらからの刺激に対する反応として動きがあるかどうか、です。

反応とは関係のない痙攣や死戦期呼吸のような「目的のない動き」を除外するためです。

疑わしければ胸を押せ、という原則からすれば、先ほど上げたようなケースで胸を押すということは間違いではありませんが、指導指針の中で、きちんと意識と反応を区別して、弁別の閾値が設定されているわけですから、少なくとも指導員レベルでは、この点はきちんと認識したいところですね。



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2016年04月10日

些細な変更? AHAガイドライン2015のBLSプロバイダーコース

日本国内事情を見ると、この4月からG2015暫定版のBLSヘルスケアプロバイダーコースに切り替わった、もしくは移行開始というところが多いようです。

G2015暫定(Interim)コースというのは、日本語化されているG2010(1つ前のガイドライン準拠)のDVDとテキストを使いつつ、最新のG2015の内容を変更点としてお伝えしていく開催方式のことを言います。

これもAHA公式の措置で、暫定コース用の新しいスキルチェックシート、筆記試験問題、補助資料がAHAから公式に日本語でリリースされています。

日本では、ようやく講習としてG2015が始まったところですが、米国では2016年2月16日に暫定版ではない正式なG2015 BLS Providerコースの教材が発売され、それから約2ヶ月半。

AHA BLSコースといえば、G2015が正式版があたりまえになっています。(少なくとも私たちが所属しているハワイ州のAmerican Medical Response TCでは)


AHAガイドライン2015版BLSプロバイダーコース筆記試験問題とDVD教材


日本国内で、G2015正式版BLSプロバイダーコースが開催されるのは、早くて夏過ぎだろうと思われます。

日本語教材が発売になるのは6月〜7月とアナウンスされていますが、受講者マニュアルもインストラクターマニュアルも同時に出ますので、日本のインストラクターが新教材を入手して、新しい指導方法を習得して公募講習に反映されるのは、おそらく夏はすぎるだろうという憶測です。

意識が高いインストラクターたちは、英語版を発売と同時に入手して、内容はすでにチェック済みかと思いますが、今回、あまりに変更のインパクトが大きく、これを正しく理解して、講習に反映させるのはなかなか大変だと感じているはずです。

ガイドラインのBLSに関する変更点は、

1.評価手順の見直し
2.胸骨圧迫のテンポの変更
3.挿管時のCPRの換気ペースの変更

くらいで、特段新しいことはなく、インストラクターのアップデートも簡単に見えます。

しかし、BLSの蘇生科学ではなく、教育面での大幅な見直しがなされ、講習の在り方の根源から変更になっているというのが、英語版新教材を見てわかったことです。

ガイドラインのBLSの章を見るだけでは気づかない、大胆なコース設計の変更がされたのが、今回の改訂の目玉だと思います。

これは、おそらく蘇生ガイドライン2015の変更点というよりは、AHAのG2015教材の変更と言ったほうがいいかと思います。国際コンセンサスCoSTRでも、教育・普及・実行に関する検討がなされて、各国ガイドラインにも反映されてはいますが、エビデンスという意味では、まだ不十分で国際コンセンサスにはなりきれないことが多くあります。

蘇生教育という点で、たくさんの知見を持っているのは、蘇生教育を世界展開しているAHA。

それらの知見をも加味して、先進的な視点で作られたのが、G2015のAHA教材なのではないでしょうか?


これらの教育面での違いがいちばんわかりやすいのはコースDVDでしょう。

ここから直感的に、コースが根本的に変わった、という点が見て取れます。

その上で、インストラクターマニュアルを丹念に見ていくことで、変更の詳細や、その理由などが見えてきます。

・実技試験では、傷病者の評価手順(反応・呼吸・脈の確認、通報のタイミング等)は問われない
・実技試験で使用する感染防護具は受講者のバックグラウンドに合わせて選択可(BVMでも!)
・筆記試験はテキスト持ち込み可

ゴール・オリエンテッド(Goal oriented)なAHAコースで、講習のゴールがここまで変わった以上、大きな幹が変わったと考えて過言ではありません。

今回、この変更があまりに大きいため、新コースの開催準備にはかなり時間がかかるのではないかと思われます。

結論から言うと、今回の改訂で、AHA-BLSコースは非常に魅力的になりました。

またその意図通りに展開できれば、BLSの実施率の大幅な上昇が望めるのではないかと思います。

だからこそ、インストラクターとしては一日も早いG2015正式コースへの移行を目指したいところです。

移行時期についてはトレーニングセンターなど、所属の判断決定に依存しますが、個人としてのスキルアップが早いに越したことはありません。


そんな意図から、

「G2015時代のBLSインストラクターを目指す」ワークショップ

を企画しました。

新しい英語版DVDを一緒に見ながら、インストラクターマニュアルの記載を紐解き、インストラクターとしてのG2015への完全移行を目指します。

5月8日(日) 横浜開催・・・詳細はこちら

5月29日(日) 久留米開催・・・詳細はこちら


どちらも参加者募集中です。

全国のインストラクターの皆さん、誰よりも速く、G2015コース移行準備を始めませんか?

AHA-BLSインストラクターであれば、所属は関係なくどなたでもご参加いただけます。日頃なかなかない、他の活動拠点のインストラクターとの交流、情報交換の場となればと思います。






posted by BLS横浜 at 12:13 | TrackBack(0) | 蘇生ガイドライン2015のBLS/ACLS/PEARS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年04月09日

BLSコースにおける真正性の課題

ガイドライン2015版のBLSプロバイダーコースDVDを見て思うことですが、現場での判断力を養うためには、講習の中でも真正性を追求していくことが重要と思います。

例えば、BLSマネキンや模擬患者相手に練習をしているときに、「大丈夫ですか?」と受講者が反応確認をした際に、インストラクターは「意識はありません」と言ってしまう場合があります。
この場面で教育すべきは、反応があるかないかを弁別して、それぞれのときにどう行動するかを決定する能力を養うことです。

「意識がありません」とインストラクターが言ってしまうと、受講者から、自分で反応の有無を判断するのだという思考回路を閉じてしまうことになります。

BLSマネキンは、単純な人形ですから、反応がないに決まっています。だから、単純なマネキン相手に反応確認を練習させるのは、基本的に無理です。1千万円近くするような、反応を示すというパターンを再現できる高規格のマネキンを使う必要が出てきます。

こう考えると、BLS講習のハードルは上がりますが、そこまでしなくてもイマジネーションに働きかけるような講習展開である程度はカバーできるかもしれません。それが今回のG2015版BLSプロバイダーコースDVDに出てくる数々のリアルなシチュエーションのデモ映像なのでしょう。

さらに言えば、そういった映像に頼らなくても、受講者が自身の経験の中から想起できるようなストーリーを語り、イメージをもってもらってから練習を行うというやり方もあります。

または、もっとシンプルにはインストラクターが模擬患者として演技をすればいいのです。顔色や心拍のコントロールはできませんが、反応の有無や呼吸の有無に関して言えば、パーシャルタスクにはなってしまいますが、マネキンよりはマシなトレーニングができるのではないでしょうか?

BLSマネキンには限界がありますが、それをどう認識して、別の方法でカバーしていくか?

それがG2015時代のインストラクターに求められる工夫ではないかと思います。




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2016年02月22日

呻吟(しんぎん)…肺組織病変の兆候

PEARSを学ぶからには、呻吟(しんぎん)についても知っておいてください。

PEARS-DVDの中ではGrantingという英単語で表現されています。そして実際の呻吟を呈している乳児の映像も出てきます。

呻吟は泣き声のようにも聞こえる、呼気時の「うめき声」です。
これは息を吐くときに声門が閉じるために生じる音です。

なぜ息を吐くときに声門を閉じるのかというと、胸腔内を陽圧に保って、肺が虚脱するのを防ごうとするからです。

南山堂の医学大辞典では次のように説明されています。

「呼気性呻吟の出る理由は呼気時に声門を閉じることにより、気道内とくに肺胞内に陽圧を残して、肺胞の虚脱を防ごうとするものであり、持続的陽圧呼吸法continuous positive airway pressure(CPAP)の目的とするところと同じである」


簡単に説明すると、肺炎など、炎症によって肺胞が水っぽくなっている状態で、息を吐き切ってしまうと、肺胞がぺたっとつぶれて、表面張力で張り付いてしまいます。

そうなると、次に息を吸って肺胞をふくらませるときに、張り付いたのを剥がすためにより強い力が必要というのは想像できると思います。

風船をふくらませる時も最初が一番力がいりますよね? ある程度ふくらんだところから、風船を大きくするのにはさほど努力は要りません。

つまり、息を吐き切ってしまうと、呼吸がしにくくなるため、それを防ぐために息を吐ききるまえに声門を閉じて肺胞が潰れるのを防いでいる、そんな体の自然の働きです。

このことをイメージしておくと、呻吟を見たときに、肺胞が潰れたら膨らみにくい病態になっているんだなと想像できます。肺胞の問題だから、上気道閉塞や下気道閉塞ではなく、肺組織病変だと関連付けられます。



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2016年02月21日

PEARSでは教わらない呼吸障害の兆候の機序

PEARSの学習を楽しくするためのヒントを少々。

生命危機状態として、PEARSプロバイダーコースでは、呼吸障害4タイプと循環障害2タイプの判定方法を学びます。

そのうち、呼吸障害の4つ、すなわち上気道閉塞と下気道閉塞、肺組織病変、呼吸調整機能障害を判定するためには、それぞれに特徴的な症状・兆候を見つけるのがポイントになります。

この表の中では、特徴的な兆候に下線を入れました。

PEARS(ペアーズ)プロバイダーコース呼吸障害の判定


これがわかれば、PEARSコース上、判定はできるのですが、丸暗記しても面白くありません。そこで予習で下記の点を調べてくることをお勧めします。

残念ながらPEARSのテキストにはそこまで細かいことは載っていませんので、手っ取り早くはネット検索などを利用するといいと思います。

1.上気道閉塞では、吸気時に喘鳴(狭窄音)が聞かれるのはなぜか?

2.下気道閉塞では、呼気時に喘鳴(狭窄音)が聞かれるのはなぜか?
  (このメカニズムが分かれば、呼気延長の理由もわかります)

3.呻吟とはなにか? 呼吸のどのタイミングで聞かれるのか? なぜ起きるのか?

4.いわゆる断続性ラ音が聞かれる機序は? 肺のどの部分がどうなってる?


これらをある程度調べておくと、PEARSが俄然おもしろくなってきますので、ぜひ探ってみてください。





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2016年02月11日

AHAガイドライン2015講習 受講者用補助資料の配信を始めました

AHAガイドライン2015準拠の成人・小児(乳児含む)のアルゴリズム図を含む「オリジナル講習補助資料」を作成しました。高画質で印刷できるPDF形式でダウンロードできます。

AHAガイドライン2015の小児・乳児複数BLSアルゴリズム図【BLS横浜オリジナル】

AHAガイドライン2015の小児・乳児救助者1人BLSアルゴリズム図【BLS横浜オリジナル】

AHAガイドライン2015の成人BLSアルゴリズム図【BLS横浜オリジナル】

G2015のアルゴリズムは、公式日本語化されたものが、AHAガイドライン2015ハイライトの中身として米国AHAウェブサイトで公開されていますが、文化背景を考慮しない直訳ということもあり、講習の中で参照してもらうには使い勝手が良くありません。

そこで、英文のガイドライン原本を参考に、BLS横浜で独自でアルゴリズムを整理して、講習会資料として作成した資料です。

これは、AHA公式版ではない点にご注意ください。

またBLS横浜での講習展開のために作成したものですので、院外心停止のアルゴリズムの概念は掲載していないなど、汎用性のあるものではありません。

下記のコースに対応しています。

・BLSヘルスケアプロバイダーコース
・PEARSプロバイダーコース
・PALSプロバイダーコース
・ACLSプロバイダーコース

3枚構成で、BLSヘルスケアプロバイダーコースでは3枚すべて、PEARS/PALSコースでは2枚目と3枚目を使用します。

ACLSプロバイダーコースやACLS-EPコースの補助資料として使う場合は1枚目だけで十分なはずです。

受講者の皆さんの事前学習にお役立てください。



ダウンロード
(PDF:約800KB)


2016年3月10日:一部改定




posted by BLS横浜 at 12:36 | TrackBack(0) | 蘇生ガイドライン2015のBLS/ACLS/PEARS | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2016年02月07日

【考察】 G2015 ヘルスケアプロバイダーの通報のタイミング

昨日は、午前中の「傷病者対応コースfor bystanders」に続けて、午後はBLSヘルスケアプロバイダーコースを開催しました。

どちらも最新のガイドライン2015で開催したのですが、方や市民向けプロトコル、かたや医療者向けプロトコル。

続けてやってみると、同じガイドライン2015でも、変更の中身は随分と違うものだなと感じました。

市民向けCPRは、しいて言うなら、胸骨圧迫のテンポの上限の120回を示す以外は大きな変更はないように思います。ですから、旧2010の教育ビデオや教え方でもほぼそのまま通じます。

それに対してヘルスケアプロバイダー向け勧告はG2005、2010、2015と大きな変遷を見せています。

手順の一部だけをピックアップして並べますと、

CPR開始までの手順の推移*AHAヘルスケアプロバイダー向けアルゴリズム


こうして並べてみると、最新のG2015は、2つ前のG2005の手順に回帰したようにも見えます。脈と呼吸を別々に見るか、同時に見るかの違いだけで、「流れ」としては、2世代前に戻ったようにも思えます。

しかし、問題は、【通報】のボックスの中身にあると思います。

今回のガイドライン2015では、通報の仕方の中身が細かく検討されるようになり、アルゴリズム図からはなかなか計り知れない複雑さを示しています。

これまでのガイドラインでは、「通報」のボックスには概念としては大きくふたつ、

1.救急対応システムへの連絡
2.AED手配

が含まれていました。そしてこれは別個のアクションというよりは、ほぼひとかたまりのものとして捉えられていたように思います。

つまり、「通報」を依頼された人は、「119番に通報して、AEDを見つけて戻ってくる」ことが期待されていました。(細かいシュチュエーション別に見ればもっと多様性がありますが)

G2005と2010のアルゴリズムでも小児に関して言えば、

1.その場で叫び、助けを求める(周りに誰かいるかいないかに関わらず)
2.救急対応システムへの通報+AED手配

というように、評価や救命の手を停めてまでして通報をするか、手を停めずに叫ぶだけで応援を要請するかを分けている部分はありました。

(目撃のない心停止≒呼吸原性心停止であれば、叫んでも誰も来なければ通報よりCPR着手を優先する。2分間CPRしても反応が戻らず誰も来なければ、手を停めて通報+AED入手)


それが、G2015では、成人のBLSアルゴリズムも含めて、通報の中身を3つのフェーズに分ける概念が採用されているように思います。

1.その場で叫び、助けを求める
2.救急対応システムを発動させる
3.AEDを入手する

この視点にたって、G2015成人BLSのアルゴリズムを見ると、すこし解釈が変わってくるかもしれません。

AHAガイドライン2015成人BLSのアルゴリズム一部抜粋(AHAガイドライン2015ハイライトより)



2番目のボックスの中身をみると、傷病者に反応がなければ、

1.大声で周囲に助けを求める
2.携帯端末で救急対応システムに通報する(適切な場合)
3.AEDおよび救急治療資器材を持ってくる(もしくは誰かにAEDを取ってくるように依頼する)

という行動が示されています。

これを見ると、このボックスで必ず行うのは、

1.その場で叫ぶ
2.AEDを取るか手配する

の2点であり、救急対応システムへの通報は(適切な場合)とあり、絶対条件的には書かれていません。

そして、心停止確認後、CPR開始前に破線部分の注釈にあるように、CPRを開始する前には、

1.救急対応システムへの出動要請
2.AED手配

の2点が修了していることが求められています。

これらをどう解釈するか、、、、ですが、この例は成人のBLSですから、心原性心停止(すなわち心室細動)を前提とし、救命の要は早期除細動と考えます。

ですから、反応がない人がいた場合は、心停止を確認する以前の速いうちからAED手配を考えます。つまり、まずは叫んで近くに人がいればAEDを持ってくるように頼み、もし誰もいなければ、近くにAEDがあることを知っていれば自分で取りに行きます。

AED手配と救急対応システムの通報がこれまでは同列に扱われていたのに対して、ここからは、AED手配が優先されることが示されているように思います。

現実的には、AEDが近くにあることを知らなければ、119番通報することが、=AED手配ということにもなるかと思いますが、厳密には概念を分けていると考えると、理解しやすいように思います。

話が少し込み入ってきてしまいましたが、結論をいうと、ヘルススケアプロバイダーの通報のタイミングはフレキシブルで、明確には規定されていないということです。携帯電話や病院内PHS、トランシーバーのような携帯端末で時間を掛けずに通報できる場合は、早期に呼ぶべきだし、通報に時間が掛かりそうなら心停止を確認してCPR開始する前までには通報するように、ということです。ただし、AEDの手配は遅れることがないように配慮するように、ということになります。

これがガイドライン変更の概念ですが、これをどのように受講者に伝えていくのかは難しいところです。今回出てきたトピックとしては、スマートフォンのハンズフリー通話機能を活用して、手を止めずに通報を行う案も示されています。

教える上では煩雑さは敵ですから、おそらく一元的なシンプルな形に整理されそうな気がしますが、2月15日のヘルスケアプロバイダーコース教材(英語)がリリースされるのが楽しみです。




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2016年01月30日

心肺蘇生法練習マネキンが服を着ていないといけない理由

先日、BLS横浜の講習会に手伝いに来てくれたインストラクターの方に言われました。

「わざわざマネキンに服を着せているんですね!」と。

BLSマネキンには服を着せる必要がある


心肺蘇生法練習用マネキンを購入すると、専用の前開きのシャツがついてきます。
ただ、ジッパーの部分が壊れやすく、壊れたらそのまま使わなくなる=裸のままの状態で使用、ということが多いようです。

BLS横浜では、マネキン専用の服が壊れた後は、写真のようにお古の服を着せています。マネキンを並べると、みんな違う色とりどりの服を着ているものだから、パッと見で目立つんでしょうね。

さて、BLS横浜の心肺蘇生法講習で、きちんとマネキンに服を着せている理由ですが、ひとつはアメリカ心臓協会の講習開催基準で定められているからです。

ハートセイバーCPR AEDコースの必要機材準備リスト


これは対応義務のある職業人のためのハートセイバーCPR AEDコースのインストラクターマニュアルの必要機材リストの一部ですが、manikin with shirtと書かれています。

ただのマネキンではなく、「シャツを着た」という指定が付いているんですね。

これを基準として、BLS横浜の講習では、原則的にすべてのBLS系講習でマネキンと服はセットで考えています。

実は、主に医療従事者向けのBLSヘルスケアプロバイダーコースのインストラクターマニュアルでは、(シャツを着ている)マネキンという限定はされていません。

ただ、マネキンとしか書かれていないのです。

そこで、BLSヘルスケアプロバイダーコースしか開催しないトレーニングサイトでは、とかく衣服には無頓着になるのだと思います。

ハートセイバーコースであえて、服を着ていることが求められている理由ですが、医療者にとっては、AED使用の際に衣服をハサミで切るのはあたりまえのことですが、学校教職員や警備員、一般の方など、いわゆる市民救助者にとっては、見ず知らずの人を衣服をはだけるという動作は日常的なことではありません。

「本当に服を脱がせていいのか? 切っていいのか?」

この所作が心理的に障壁が大きいことは想像に固くありません。

そこで、CPRを開始するときやAEDを装着するときに、服をはだけるという動作を意図的に練習させているのです。

そんな意図を考えたら、たかが服一枚ですが、あるなしでは大きな違いですよね。


一般講習では、練習の簡便さとのバランスで前開きのベストを1枚着せているだけですが、警備員さん向け講習など、リアリティが求められる講習では、Tシャツを着せた上にベストを着せたり、より現実に近い設定にして行うこともあります。

その場合は、AED練習機に入れてあるハサミで、実際にTシャツを切ってもらう練習もしています。

やってみるとわかりますが、練習とはいえ、CPRをしている状態で、襟元からハサミで服を切ってもらうという体験は受講者にとってはインパクトが大きく、大抵の方がためらいを示します。

その様子を見ていると、練習とはいえ、服を着る体験というのが、現実の行動への期待を考えた時にはとても意味のある練習だと思います。

たかが服1枚ですが、救命法指導員の方は、再考してみてはいかがでしょうか?




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2016年01月24日

ポケットマスク人工呼吸を教える際の動機付け(教育工学的視点から)

2010年版からBLSヘルスケアプロバイダーコースでは、口対口人工呼吸の練習がなくなりました。

BLS-HCPコースは、救命のプロのための一次救命処置講習です。

米国では労働安全衛生局(OSHA)の勧告で、業務上の蘇生では感染防護具を使うことを義務付けられています。そこで医療者レベルの教育では、練習するのはバッグマスクとポケットマスク(フェイスマスク)換気だけになってしまいました。

ただ、日本の医療現場では、ポケットマスクは知られていませんし、病院として用意しているところもほとんどないでしょう。

BLS-HCP講習で、初めてポケットマスクの存在を知ったという医療従事者も多いことと思います。

小児BLSマネキンとポケットマスク:成人用と小児用


米国で作られた講習DVDでは、ごくあたりまえのようにポケットマスクの練習が始まりますが、この点、日本では「医療従事者であっても知らない人が多い」という事情に合わせて、一歩踏み込んで説明しておいたほうがいいと思っています。

特に、見たこともなく、どこで使うのかもわからないポケットマスクの練習をさせるなら、教育工学の動機付けモデル(例えばARCSモデル)を考慮して、学ぶ意義は伝えるべきかと思います。

そこで、BLS横浜では、この写真のようなケースをお伝えしています。


AEDと共に配備されたポケットマスク
↑ 横浜市内の公民館に置かれていたAEDとポケットマスク



これは、とある公民館に設置されていたAEDの写真です。

赤いAED本体の上に、黄色と黒(青?)の物体が置かれているのが見えますか?

ポケットマスク、がきちんと用意されていたのでした。

このように、「病院では見たことないかもしれないけど、街中に設置されているAEDの中には、ポケットマスクが準備されている場合があるんですよ」とBLS講習の中で伝えることは大切かなと思っています。

なので、BLS横浜で開催するBLSヘルスケアプロバイダーコースやハートセイバーCPR AEDコースでは、AED本体だけではなく、収納ソフトケースも示して、「もし、街中で救命する機会があって、AEDといっしょにこんなケースがあったら、これだ! と思ってぜひ使ってくださいね」という話をしています。



BLSヘルスケアプロバイダーコースを受講に来る方の大半は、病院業務で活かすためと考えていますので、勤務先病院にポケットマスクがなければ、練習を行う意義について空虚になりがちです。

ですから、インストラクターは、「学習内容が自分にとってどのように役立つのか?」というARCSモデルの Relevance(関連性)を提示しつつ、学習を進めることは大切だと思っています。


さて、街中のAEDにポケットマスクが用意されているのは普通のことなのか、という話ですが、これはなんとも言えません。

AEDを購入ないしはリース契約をする際に、販売業者はさまざまなオプションを勧めてきます。服を切るためのハサミやタオルやカミソリをまとめたポーチや、予備のAEDパッドなど。

この中の一つとしてポケットマスクがあるわけですが、それを追加購入するかどうかを決めるのは、施設の設置者です。

知り合いのAED販売をしている人は、医療・福祉系施設に納入するときはポケットマスクの追加配備を強く勧めて、練習もしてもらっている、といっていましたが、一般の販売員がどこまでポケットマスクの重要性を認識しているかによって温度差はあると思います。


先ほどの写真の施設は、業者から勧められるままにポケットマスクを配備したというよりは、おそらく中身をきちんとわかった職員や第三者によって整備されたもののように思います。

というのは、AEDの脇にジップロックに入ったガーゼやタオルが見えますが、明らかに「手作りキット」だからです。

別の例として、とある小学校を訪問した際には、ポケットマスクだけではなく、バッグバルブマスクもAEDケースの上においてあって驚きましたが、ポケットマスクは、ケースに収めた状態ではなく、すぐに使えるように立体的に組み立てた状態でジップロックに入れてAEDとつなげておいてありました。

これは学校内でシミュレーションを行った際に、ポケットマスクの組み立てが時間がかかって現実的ではないと気づいたからだそうです。


AEDを配備するのはいいですが、その施設ごとの特性や訓練内容と合わせて、AED付属キットのアレンジを考えていくのは大切なことと思います。



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2015年12月27日

G2015コースへの移行について

世界の蘇生シーンをリードするアメリカ心臓協会(AHA)の講習プログラムは、早くも2015ガイドライン準拠に切り替わりました。この12月からG2015 Interim(暫定)コースが始まっています。

AHAのG2015 Interim(暫定)コースは、旧ガイドライン2010版のテキストとDVDを使って進められますが、AHAが提供する補助教材を使ってG2015の手順・基準で指導をしていきます。

筆記試験問題、実技試験チェックリストも新しくなっています。

暫定コース資料の日本語化の問題もあって、日本国内では、旧来のG2010コースのままで、切り替わっていないところが大半だと思います。

旧2010コース開催が許容されているのは、2016年2月15日まで、それ以降は、暫定コース/正規コース含めてすべてガイドライン2015準拠で指導をしなければならないと定められています。

なお、BLS横浜では、年内のコース開催予定はありませんので、G2015暫定コースの開催は、2016年1月以降となります。最初は1月11日(祝)のPEARSプロバイダーコースからG2015 Interimコースに移行し、以後開催するAHA講習はすべてG2010暫定コースとする予定です。





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2015年12月23日

「わかる」と「できる」は違う シミュレーションの効用

わかることと、できることは違う。

誰でも頭ではわかっていると思います。

しかし、このことを強く突きつけられるのが、シミュレーション・トレーニングではないでしょうか。


Sim-PEARSプロバイダーコースを例に、説明してみます。

PEARSでは、事前学習に加えて、ビデオ教材で体系的アプローチの説明を聞いて、映像を見ながらのディスカッションベースのアセスメント訓練で、A-B-C-D-Eアプローチの仕方を段階的に身に着けていきます。

息も絶え絶えに呼吸をする子どもの映像、顔面蒼白で眼球上転している子どもの映像。

そんなリアルな教材を使ってアセスメントの練習をする、これまでに経験したことがないリアルな学習体験に、座学でのディスカッションだけでもそれなりに満足感を感じるのがPEARS(Simなし)です。

しかし、この後、2010年版からはオプション扱いになっている「シミュレーション」を行うと、受講者の心持ちは変わります。

さっき、映像をみて練習して、なんとなくできる気になっていた体系的アプローチが、マネキンの前に立ち、チームメンバーと向き合った時に、ちっとも進まなくなるのです。

「頭のなかが真っ白になった」という感想は珍しくありません。

分かった気になっていたけど、できない。

そんな現実に直面するのです。


PEARSプロバイダーコースで、体系的アプローチを学ぶのは、試験に合格するためではありません。

臨床で使うために学ぶのだという点は言うまでもありません。

体系的アプローチという手法を知るのが第一歩ですが、知るだけでは使えない。

そのことに気づくだけでも、シミュレーションの効果は絶大です。

シミュレーションを通して使い方の練習を行い、チームメンバーとの連携の仕方と報告を体得するというさらなる学習体験が必要です。

そして、最終段階として実臨床で使ってみる。

そうして、「知る」と「できる」の間の溝を埋めていく必要があります。

特に実臨床の前に、患者さんに不利益のないシミュレーション学習で経験値を上げておくことは大きな意味があります。シミュレーションありとなしでは、「できる」までの段階差は雲泥の違いといって過言ではありません。




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2015年12月03日

AEDを使った二次救命処置(ALS)トレーニング 【Sim-PEARS】

BLS横浜が開催している「PEARS with シミュレーション」での心停止ケースシミュレーションでは、AEDを使った二次救命処置(ALS)を経験してもらっています。

病棟での心停止にAEDとバッグマスクで挑んでもらうのですが、BLS-HCPと違うのはチームメンバーの看護師が6人いるということ。そして途中から医師と電話連絡がつき、薬剤投与の口頭指示が出るという点。

PEARSでは、PALSと違って、リーダーはインストラクターが行うということになっていますので、このような体裁をとっているわけですが、ここでも重要なのは報告です。チームダイナミクスでいえば情報共有でしょうか。

ナースだけでAEDを使っているシチュエーションであれば、医師としては、AEDの解析結果が気になるところです。

つまり、除細動のショックをしたのか、それともショックは不要と言われたのか?

これによって、アルゴリズムが違ってくるからです。

AEDがショックが必要と判断したのであれば、心停止としてはおそらく心室細動(もしくは無脈性心室頻拍)です。そして、AEDがショック不要と判断したのであれば、心停止のタイプは、無脈性電気活動もしくは心静止です。(通常はモニター波形を見て判断するところを、AEDでの蘇生ではAEDの挙動から判断する、ということです。)

ACLSにしてもPALSにしても、両者ではアルゴリズムが別です。

質の高いCPRが必要という点では同じですが、薬剤投与が違ってきますし、優先すべきもの(除細動/原因検索)も違ってきます。

ここを認識しているかどうか、というのが、この心停止シナリオでは試されるところです。


医師に対して「AEDを使いました!」という報告では不十分だというのはわかるでしょうか?

AEDを使ったというのが、パッドを装着したという動作を意味しているのか、除細動のショックをしたという意味なのか明確ではないからです。

AEDがショック判定をして除細動をしました、もしくは、ショック不要でした、をはっきり伝える必要があります。

この点を認識してもらうために、「ショック不要」設定にしたAEDトレーナーを使ってシミュレーションを行っています。

BLSはとりあえず早期除細動と質の高いCPRができればいいと思われがちですが、病院の中でのBLSはBLSでは終わりません。そして小児に関して言えば、ショック不要と言われる無脈性電気活動のケースが多いはず。

AEDときたら、必ずショックをするものだという昨今のBLS訓練ゆえの先入観を脱却するという点でも、印象深い学習体験になるようです。





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