横浜駅から徒歩5分の場所で、AHA-BLS-HCP、PEARS、ファーストエイド講習を開催しています。

開催日程詳細・お申し込みは ホームページ をご覧ください。

2016年01月30日

心肺蘇生法練習マネキンが服を着ていないといけない理由

先日、BLS横浜の講習会に手伝いに来てくれたインストラクターの方に言われました。

「わざわざマネキンに服を着せているんですね!」と。

BLSマネキンには服を着せる必要がある


心肺蘇生法練習用マネキンを購入すると、専用の前開きのシャツがついてきます。
ただ、ジッパーの部分が壊れやすく、壊れたらそのまま使わなくなる=裸のままの状態で使用、ということが多いようです。

BLS横浜では、マネキン専用の服が壊れた後は、写真のようにお古の服を着せています。マネキンを並べると、みんな違う色とりどりの服を着ているものだから、パッと見で目立つんでしょうね。

さて、BLS横浜の心肺蘇生法講習で、きちんとマネキンに服を着せている理由ですが、ひとつはアメリカ心臓協会の講習開催基準で定められているからです。

ハートセイバーCPR AEDコースの必要機材準備リスト


これは対応義務のある職業人のためのハートセイバーCPR AEDコースのインストラクターマニュアルの必要機材リストの一部ですが、manikin with shirtと書かれています。

ただのマネキンではなく、「シャツを着た」という指定が付いているんですね。

これを基準として、BLS横浜の講習では、原則的にすべてのBLS系講習でマネキンと服はセットで考えています。

実は、主に医療従事者向けのBLSヘルスケアプロバイダーコースのインストラクターマニュアルでは、(シャツを着ている)マネキンという限定はされていません。

ただ、マネキンとしか書かれていないのです。

そこで、BLSヘルスケアプロバイダーコースしか開催しないトレーニングサイトでは、とかく衣服には無頓着になるのだと思います。

ハートセイバーコースであえて、服を着ていることが求められている理由ですが、医療者にとっては、AED使用の際に衣服をハサミで切るのはあたりまえのことですが、学校教職員や警備員、一般の方など、いわゆる市民救助者にとっては、見ず知らずの人を衣服をはだけるという動作は日常的なことではありません。

「本当に服を脱がせていいのか? 切っていいのか?」

この所作が心理的に障壁が大きいことは想像に固くありません。

そこで、CPRを開始するときやAEDを装着するときに、服をはだけるという動作を意図的に練習させているのです。

そんな意図を考えたら、たかが服一枚ですが、あるなしでは大きな違いですよね。


一般講習では、練習の簡便さとのバランスで前開きのベストを1枚着せているだけですが、警備員さん向け講習など、リアリティが求められる講習では、Tシャツを着せた上にベストを着せたり、より現実に近い設定にして行うこともあります。

その場合は、AED練習機に入れてあるハサミで、実際にTシャツを切ってもらう練習もしています。

やってみるとわかりますが、練習とはいえ、CPRをしている状態で、襟元からハサミで服を切ってもらうという体験は受講者にとってはインパクトが大きく、大抵の方がためらいを示します。

その様子を見ていると、練習とはいえ、服を着る体験というのが、現実の行動への期待を考えた時にはとても意味のある練習だと思います。

たかが服1枚ですが、救命法指導員の方は、再考してみてはいかがでしょうか?




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2016年01月24日

ポケットマスク人工呼吸を教える際の動機付け(教育工学的視点から)

2010年版からBLSヘルスケアプロバイダーコースでは、口対口人工呼吸の練習がなくなりました。

BLS-HCPコースは、救命のプロのための一次救命処置講習です。

米国では労働安全衛生局(OSHA)の勧告で、業務上の蘇生では感染防護具を使うことを義務付けられています。そこで医療者レベルの教育では、練習するのはバッグマスクとポケットマスク(フェイスマスク)換気だけになってしまいました。

ただ、日本の医療現場では、ポケットマスクは知られていませんし、病院として用意しているところもほとんどないでしょう。

BLS-HCP講習で、初めてポケットマスクの存在を知ったという医療従事者も多いことと思います。

小児BLSマネキンとポケットマスク:成人用と小児用


米国で作られた講習DVDでは、ごくあたりまえのようにポケットマスクの練習が始まりますが、この点、日本では「医療従事者であっても知らない人が多い」という事情に合わせて、一歩踏み込んで説明しておいたほうがいいと思っています。

特に、見たこともなく、どこで使うのかもわからないポケットマスクの練習をさせるなら、教育工学の動機付けモデル(例えばARCSモデル)を考慮して、学ぶ意義は伝えるべきかと思います。

そこで、BLS横浜では、この写真のようなケースをお伝えしています。


AEDと共に配備されたポケットマスク
↑ 横浜市内の公民館に置かれていたAEDとポケットマスク



これは、とある公民館に設置されていたAEDの写真です。

赤いAED本体の上に、黄色と黒(青?)の物体が置かれているのが見えますか?

ポケットマスク、がきちんと用意されていたのでした。

このように、「病院では見たことないかもしれないけど、街中に設置されているAEDの中には、ポケットマスクが準備されている場合があるんですよ」とBLS講習の中で伝えることは大切かなと思っています。

なので、BLS横浜で開催するBLSヘルスケアプロバイダーコースやハートセイバーCPR AEDコースでは、AED本体だけではなく、収納ソフトケースも示して、「もし、街中で救命する機会があって、AEDといっしょにこんなケースがあったら、これだ! と思ってぜひ使ってくださいね」という話をしています。



BLSヘルスケアプロバイダーコースを受講に来る方の大半は、病院業務で活かすためと考えていますので、勤務先病院にポケットマスクがなければ、練習を行う意義について空虚になりがちです。

ですから、インストラクターは、「学習内容が自分にとってどのように役立つのか?」というARCSモデルの Relevance(関連性)を提示しつつ、学習を進めることは大切だと思っています。


さて、街中のAEDにポケットマスクが用意されているのは普通のことなのか、という話ですが、これはなんとも言えません。

AEDを購入ないしはリース契約をする際に、販売業者はさまざまなオプションを勧めてきます。服を切るためのハサミやタオルやカミソリをまとめたポーチや、予備のAEDパッドなど。

この中の一つとしてポケットマスクがあるわけですが、それを追加購入するかどうかを決めるのは、施設の設置者です。

知り合いのAED販売をしている人は、医療・福祉系施設に納入するときはポケットマスクの追加配備を強く勧めて、練習もしてもらっている、といっていましたが、一般の販売員がどこまでポケットマスクの重要性を認識しているかによって温度差はあると思います。


先ほどの写真の施設は、業者から勧められるままにポケットマスクを配備したというよりは、おそらく中身をきちんとわかった職員や第三者によって整備されたもののように思います。

というのは、AEDの脇にジップロックに入ったガーゼやタオルが見えますが、明らかに「手作りキット」だからです。

別の例として、とある小学校を訪問した際には、ポケットマスクだけではなく、バッグバルブマスクもAEDケースの上においてあって驚きましたが、ポケットマスクは、ケースに収めた状態ではなく、すぐに使えるように立体的に組み立てた状態でジップロックに入れてAEDとつなげておいてありました。

これは学校内でシミュレーションを行った際に、ポケットマスクの組み立てが時間がかかって現実的ではないと気づいたからだそうです。


AEDを配備するのはいいですが、その施設ごとの特性や訓練内容と合わせて、AED付属キットのアレンジを考えていくのは大切なことと思います。



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2015年12月27日

G2015コースへの移行について

世界の蘇生シーンをリードするアメリカ心臓協会(AHA)の講習プログラムは、早くも2015ガイドライン準拠に切り替わりました。この12月からG2015 Interim(暫定)コースが始まっています。

AHAのG2015 Interim(暫定)コースは、旧ガイドライン2010版のテキストとDVDを使って進められますが、AHAが提供する補助教材を使ってG2015の手順・基準で指導をしていきます。

筆記試験問題、実技試験チェックリストも新しくなっています。

暫定コース資料の日本語化の問題もあって、日本国内では、旧来のG2010コースのままで、切り替わっていないところが大半だと思います。

旧2010コース開催が許容されているのは、2016年2月15日まで、それ以降は、暫定コース/正規コース含めてすべてガイドライン2015準拠で指導をしなければならないと定められています。

なお、BLS横浜では、年内のコース開催予定はありませんので、G2015暫定コースの開催は、2016年1月以降となります。最初は1月11日(祝)のPEARSプロバイダーコースからG2015 Interimコースに移行し、以後開催するAHA講習はすべてG2010暫定コースとする予定です。





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2015年12月23日

「わかる」と「できる」は違う シミュレーションの効用

わかることと、できることは違う。

誰でも頭ではわかっていると思います。

しかし、このことを強く突きつけられるのが、シミュレーション・トレーニングではないでしょうか。


Sim-PEARSプロバイダーコースを例に、説明してみます。

PEARSでは、事前学習に加えて、ビデオ教材で体系的アプローチの説明を聞いて、映像を見ながらのディスカッションベースのアセスメント訓練で、A-B-C-D-Eアプローチの仕方を段階的に身に着けていきます。

息も絶え絶えに呼吸をする子どもの映像、顔面蒼白で眼球上転している子どもの映像。

そんなリアルな教材を使ってアセスメントの練習をする、これまでに経験したことがないリアルな学習体験に、座学でのディスカッションだけでもそれなりに満足感を感じるのがPEARS(Simなし)です。

しかし、この後、2010年版からはオプション扱いになっている「シミュレーション」を行うと、受講者の心持ちは変わります。

さっき、映像をみて練習して、なんとなくできる気になっていた体系的アプローチが、マネキンの前に立ち、チームメンバーと向き合った時に、ちっとも進まなくなるのです。

「頭のなかが真っ白になった」という感想は珍しくありません。

分かった気になっていたけど、できない。

そんな現実に直面するのです。


PEARSプロバイダーコースで、体系的アプローチを学ぶのは、試験に合格するためではありません。

臨床で使うために学ぶのだという点は言うまでもありません。

体系的アプローチという手法を知るのが第一歩ですが、知るだけでは使えない。

そのことに気づくだけでも、シミュレーションの効果は絶大です。

シミュレーションを通して使い方の練習を行い、チームメンバーとの連携の仕方と報告を体得するというさらなる学習体験が必要です。

そして、最終段階として実臨床で使ってみる。

そうして、「知る」と「できる」の間の溝を埋めていく必要があります。

特に実臨床の前に、患者さんに不利益のないシミュレーション学習で経験値を上げておくことは大きな意味があります。シミュレーションありとなしでは、「できる」までの段階差は雲泥の違いといって過言ではありません。




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2015年12月03日

AEDを使った二次救命処置(ALS)トレーニング 【Sim-PEARS】

BLS横浜が開催している「PEARS with シミュレーション」での心停止ケースシミュレーションでは、AEDを使った二次救命処置(ALS)を経験してもらっています。

病棟での心停止にAEDとバッグマスクで挑んでもらうのですが、BLS-HCPと違うのはチームメンバーの看護師が6人いるということ。そして途中から医師と電話連絡がつき、薬剤投与の口頭指示が出るという点。

PEARSでは、PALSと違って、リーダーはインストラクターが行うということになっていますので、このような体裁をとっているわけですが、ここでも重要なのは報告です。チームダイナミクスでいえば情報共有でしょうか。

ナースだけでAEDを使っているシチュエーションであれば、医師としては、AEDの解析結果が気になるところです。

つまり、除細動のショックをしたのか、それともショックは不要と言われたのか?

これによって、アルゴリズムが違ってくるからです。

AEDがショックが必要と判断したのであれば、心停止としてはおそらく心室細動(もしくは無脈性心室頻拍)です。そして、AEDがショック不要と判断したのであれば、心停止のタイプは、無脈性電気活動もしくは心静止です。(通常はモニター波形を見て判断するところを、AEDでの蘇生ではAEDの挙動から判断する、ということです。)

ACLSにしてもPALSにしても、両者ではアルゴリズムが別です。

質の高いCPRが必要という点では同じですが、薬剤投与が違ってきますし、優先すべきもの(除細動/原因検索)も違ってきます。

ここを認識しているかどうか、というのが、この心停止シナリオでは試されるところです。


医師に対して「AEDを使いました!」という報告では不十分だというのはわかるでしょうか?

AEDを使ったというのが、パッドを装着したという動作を意味しているのか、除細動のショックをしたという意味なのか明確ではないからです。

AEDがショック判定をして除細動をしました、もしくは、ショック不要でした、をはっきり伝える必要があります。

この点を認識してもらうために、「ショック不要」設定にしたAEDトレーナーを使ってシミュレーションを行っています。

BLSはとりあえず早期除細動と質の高いCPRができればいいと思われがちですが、病院の中でのBLSはBLSでは終わりません。そして小児に関して言えば、ショック不要と言われる無脈性電気活動のケースが多いはず。

AEDときたら、必ずショックをするものだという昨今のBLS訓練ゆえの先入観を脱却するという点でも、印象深い学習体験になるようです。





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2015年12月02日

Sim-PEARS、シミュレーション・トレーニングの魅力

BLS横浜で開催するAHA-PEARSプロバイダーコースでは、シミュレーション・トレーニングを取り入れています。(正確にいうと「省略」していません)

BLS横浜の工夫としては、PEARS-DVDの動画で示されるモニター画面だけではなく、リモコン操作できるiPadのモニター心電図アプリを併用して、リアルタイムにバイタルサインを変化させて、シミュレーションの効果を強化しています。

iPhoneの心電図モニターアプリ sim-mon
iPhoneの心電図シミュレーターアプリ sim-mon



PEARSの根幹は、評価-判定-介入-再評価 のサイクルにあります。

PEARS(ペアーズ)の評価-判定-介入のサイクル


問題のタイプと重症度を判定して、安定化のための介入をしたらおしまいではなく、その処置の結果を見て、評価をしていくことが重要です。(ビジネスでいうPDCAサイクルと同じです)

例えば、酸素投与方法として、単純マスク4リットルとした場合、それが妥当なのか、より高流量が必要ではないかは、酸素飽和度の上昇や呼吸状態の変化を見なければ判断できません。

そこで用いるのが、心電図波形や数値を自由に変更することができるモニター心電図のシミュレーターです。

酸素投与後の酸素飽和度の変化はどうなのか、言葉だけのシミュレーションだと抜けてしまうことが多いですが、モニターを使うとよりリアリティを出すことができます。

他にも、例えば、本来はバッグバルブマスク換気が必要な場面で、低流量酸素投与しか行っていない場合は、いつまでもサチュレーションを上げないことで、インストラクターの誘導ではなく、主体的に問題認識を捉えて考えてもらうこともできます。

ショックのケース・シミュレーションでも、輸液のボーラス投与が奏功すれば、呼吸数や心拍数などを斬減させることで、再評価の意義を実感してもらうこともできます。

本来は1千万円近くする高規格シミュレーション・マネキンを使わなければ再現できなかった学習体験が、iPadと数千円(2015年12月現在で2,500円)のアプリで再現できるのは魅力です。


PEARSに限ったことではありませんが、医療現場のトレーニング、特に非心停止対応訓練では、iPadの活用はおすすめです。

BLSやACLSと違って、条件反射を鍛えるのではなく、考え方を鍛えるのがファーストエイド系の非心停止対応訓練。考える材料をどう示すか、そして考える時間を確保することが重要です。



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2015年12月01日

Sim-PEARSプロバイダーコース、シナリオの進め方

PEARSインストラクターマニュアルには、ケースごとの詳細なシナリオシートが載っています。

AHA-PEARS(ペアーズ)プロバイダーコースのシナリオシート


顔色や呼吸様式、呼吸音、毛細血管再充満時間、バイタルサインなどは、DVDの中で動画で示されますが、血糖値や瞳孔径などの情報は、このシナリオに基づいてインストラクターが提示していきます。

シナリオにはケースの導入として、「あなたは4ヶ月の乳児の評価をしています。母親によると3日前から嘔吐を繰り返しており…」というような状況が示されるのですが、BLS横浜では、あえてこの状況提示を行わずにケースを始めることがあります。

なぜかというと、シナリオによっては、「あ、これは敗血症性ショックだな!」などと原因がミエミエなものも少なくないからです。

現実の臨床ではある程度情報があった上で、患者さんに接するのがふつうですから、私たちは常に「情報」による先入観、バイアスを持って診療にあたっています。

場合によっては、先入観ゆえに別の問題を見落とすという可能性も否定できません。



PEARSは臨床所見からフィジカルアセスメントをする力を鍛えるプログラムです。体系的アプローチという見落としを防ぐための標準的な評価方法を身につけるのが目的です。

そのため、臨床からすると不自然ではありますが、あえて、情報は一切提示せず、0の状態から患者を見て、臨床症状だけで体系的に判断していく練習をしてもらっています。



シミュレーション・トレーニングの中では、あとから家族や目撃者が駆けつけて、ようやく話が聞ける、という形で、傷病者の背景や既往などを提示しています。

ここで臨床所見からの判定と、患者背景が一致すればより方向性に確信を持てますし、場合によってはより精度を上げることができるかもしれません。


シナリオトレーニングの中では、受講者の方は「家族を呼んで!」とか「ドクター報告を!」とすぐに助けを求めますが、あえて情報は出さない。

すこし意地悪かもしれませんが、こうして、目の前の患者さんの状態だけである程度判断するという思考を身につけると、どんな場合でも強いのではないでしょうか?


バイスタンダーとしてのファーストエイドの現場は、まさにこれです。

なにが起きたのか、傷病者の状態、既往もまったくわからない。

こんなときにひるまず対峙できるのが、PEARSプロバイダーの強みだと思います。





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2015年11月12日

上気道閉塞の吸気喘鳴、下気道閉塞の呼気時喘鳴のメカニズム

PEARSプロバイダーコース受講予定の方から質問のメールをいただきました。


気道閉塞の徴候について

上気道閉塞の徴候として、吸気性喘鳴があるのですが、なぜ上気道閉塞の際に吸気性喘鳴が出現するのでしょうか。

また下気道閉塞の徴候として、呼気性喘鳴がありますが、その際も呼気性喘鳴が出現
する機序が考えられないです。

上気道閉塞の原因としてクループやアナフィラキシー、異物吸引、感染がありますが、上気道閉塞であっても気道が閉塞しているので呼気の際にも喘鳴が見られてもおかしくないのではと考えています。

下気道閉塞の際にも、呼気だけでなく吸気にも喘鳴が聞くことができないのかと考えました。またテキストには、「下気道閉塞の際に吸気性喘鳴を聞くことができるのはまれ」と書いてあり、なぜかわかりませんでした。

適切な評価をするうえで、暗記では通じないと思ったので今回気道閉塞の喘鳴について質問させていただきました。



理解するための質問、大歓迎です。

この質問に対する答えですが、まず、上気道閉塞に見られやすい吸気時喘鳴は「舌根沈下」をイメージしてもらうといいと思います。

簡単にいうと、いびきです。

いびきって、息を吸うときに聞こえますよね?(今度、隣に寝ている人を観察してみてください)

舌が落ち込んで、気道を覆うようにかぶさっているのをイメージしてください。

吸うときに舌が吸い込まれて張り付いて、気道が塞がれる。そのとき、わずかな隙間から空気が流れこむときに聞こえる音がいびきです。(狭い隙間を通るときに音がなるのは笛と同じ仕組です。)

このことからわかるように、息を吸うときには上気道(胸郭より上の喉)に陰圧がかかります。

クループやアナフィラキシーで上気道全体が腫れて狭窄している場合も、吸気時には上気道に陰圧がかかりますから、気管の奥の方から吸い込まれるように圧力がかかり、気道がより細くなるような力が働き、狭窄して喘鳴(連続性の音)が聞こえるというわけです。

吐くときは、下気道から空気が押し出されてくる状態になりますから、上気道は陰圧になりません。ですからさらなる狭窄が起きることもなく、喘鳴は聞こえにくいといえます。



下気道閉塞の場合は、胸郭が縮んで胸腔内圧を上げて空気を押し出しますので、胸郭内にある下気道(つまり気管支)はギュッと圧縮された形になります。もともと攣縮や分泌物で狭窄していたところが、胸腔内圧が上がることでより細くなり、笛のように喘鳴が聴こえるというしくみです。

呼気時に陰圧となるのは胸郭内にある気道、つまり下気道のみです。上気道は胸郭外にありますから胸郭の収縮に伴う陰圧の影響は受けずに細くなりません。ゆえに呼気時の狭窄音は聞こえにくいといえます。


実際のところ、狭窄が顕著であれば、吸気でも呼気でも喘鳴が聞こえることがありますが、どちらの方がより強く聞こえるかという観点で考えてもらえたらと思います。

下気道閉塞を疑うのであれば、呼気時喘鳴の他に、呼気延長も見られたりします。喘息症状を思い出してみてください。がんばって息を吐き出す感じです。なぜ、息が吐きづらくて呼気相が延長するのか?

先ほどの呼気時喘鳴のしくみを考えてみればわかりますよね? 呼吸運動で胸郭が縮まるために、胸腔内圧が上がって下気道が狭くなるために、履く時に努力が必要になるせいで、呼気相が延長するというしくみ。


丸暗記するのではなく、このように理解すると忘れないと思います。




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2015年11月11日

蘇生ガイドライン2015の成り立ち なぜ各国で違う?

先月、心肺蘇生法のガイドラインが改定されて話題となりました。
この機会に蘇生ガイドライン2015の成り立ちをおさらいしておきましょう。

国際コンセンサスCoSTR2015と各国蘇生ガイドライン2015の関係について


国際蘇生連絡協議会 ILCOR (イルコアと読みます)という組織があります。

これは世界の蘇生科学の研究団体が集まって構成され、5年毎に心肺蘇生法の国際合意を作成しています。

ざっくりというと、命題を決めて、蘇生科学の学術論文を集めて、検討し、その時点で考えられうる最適な蘇生法とその根拠性、限界(ギャップ)を提案するというのがILCOR会議の役割です。

そこで勧告される合意事項(国際コンセンサス)をCoSTR(コスター)といいます。

今回の場合は2015年10月15日にILCORからCoSTRが発表となり、それに合わせてILCOR構成員にも情報解禁されました。結果、CoSTR作成と合わせてガイドライン策定を行っていたアメリカ心臓協会(AHA)とヨーロッパ蘇生協議会(ERC)がそれぞれ独自の蘇生ガイドライン2015を発表しました。

日本は1日遅れて10月16日に日本蘇生協議会(JRC)から日本版蘇生ガイドライン2015オンライン版が発表されています。

CoSTR作成の根拠となるのは世界からの学術論文です。ですから、学術論文で取り上げられないことは、CoSTRでは取り上げられない、もしくは、限界として示されます。

例えば、反応確認を行うときに、両手で方を叩くのか、片手で叩くのか、などといった末端的なことなどは、CoSTRでは取り上げられません。

CoSTRで勧告されることは、基本的に医学的に根拠があることや研究されていることだけです。

しかし、それだけでは歯抜け状態すぎて、実際の指針にはなりえず、蘇生法指導は行えません。

そこで、国際コンセンサスでは抜けている部分を各国事情で補足して、指針としたのが各国ガイドラインです。

国際コンセンサスが骨格で、そこに文化や風土や社会事情を含めて盛りつけしたのがガイドラインと考えるといいかもしれません。

ですから、ガイドラインは国や地域の事情に合わせて違いますし、複数存在します。

それが有名どころではヨーロッパのERCガイドライン、米国のAHAガイドライン、日本のJRCガイドラインというわけです。

いずれも骨格はCoSTR2015に準拠していますから、大きくは同じですが、その解釈や優先順位の考え方などで、かなり違って見える部分もあるのは事実です。


というわけで、ガイドライン2015は絶対無二の唯一のものではないということを是非知っておいてください。

その昔、国際ガイドラインという言い方をしていた時代があったので、そう覚えている人もいるかもしれませんが、国際コンセンサスはあっても、国際ガイドラインは存在しないというのが、いまの蘇生科学の世界です。


ここは日本ですから、日本のJRCガイドライン2015だけ知っていればいいはずなのですが、なぜか、日本ではJRCガイドラインとAHAガイドラインが共存する形となっています。

このあたりのことはまた今度書きたいと思います。




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2015年10月24日

劇的に変わる日本の応急手当 国際水準のファーストエイドがついに!

明日はひさしぶりにハートセイバー・ファーストエイドコースを開催します。

ガイドライン2015が発表になって、日本で大きく変わった点といったら、やっぱりファーストエイドでしょう。

今回はじめて日本版ガイドラインにもファーストエイドの章が新設されました。これでようやく日本でも国際水準のファーストエイド文化がスタートすることになります。

この点、米国ガイドラインでは、少なくとも2005ガイドラインの時点で、ファーストエイドの基準を示していました。2010年では、ファーストエイド国際会議(ILCORとは別組織)を経て、ファーストエイド国際コンセンサスを策定、それを元にファーストエイドガイドラインを打ち出していました。

G2005時代には、日本でも「救急蘇生法の指針2005」の中では、ファーストエイドの項目があり、そこには米国版ファーストエイドガイドラインがほぼそのまま踏襲されて載っていたのですが、なぜか2010ガイドライン準拠の「救急蘇生法の指針2010」では、ほとんどアップデートされることなく、国際ファーストエイドガイドラインは無視した形になっていました。

というのは、ファーストエイド項目は、ILCOR(国際蘇生連絡協議会)の俎上には採択されず、国際応急処置学術審議会(International FirstAid Science Advisory Bord)という別の学術会議での扱いとなっていたからです。

一方、米国では、BLS/ACLS/PALS/NRPに関してはILCOR会議を経たものを、そしてファーストエイドに関しては国際応急処置学術審議会のコンセンサスをもって、AHAガイドライン2010を作成、その中には第12章としてファーストエイドが含まれていました。

今回、ファーストエイドの必要性が国際的に再認識されて、ILCOR審議にファーストエイドが乗りました。しかしそこで取り上げられるトピックは基本的に前身である国際応急処置学術審議会(International FirstAid Science Advisory Bord)の内容を踏襲していますので、以前からファーストエイド・ガイドラインを採用していた米国では、比較的マイナーチェンジだったと言えるでしょう。

G2005はともかく、G2010をスッポ抜かして、今回初めて公式初採択とした日本では、ファーストエイドの認識がガラリと大きく変わったといえます。

ということでファーストエイド・ガイドライン改定に関する温度差は日米では相当違うものであろうと想像できます。


さて、日本のファーストエイドはG2005で止まったままでした。しかし、アメリカ心臓協会のガイドラインは日本語訳されていますし、国際ファーストエイド・コンセンサスに基づいた、ハートセイバー・ファーストエイドコースも完全翻訳されて日本で細々とながら展開されていましたから、米国基準で学んでいたファーストエイド・プロバイダーにとって、それほど目新しい話はないかもしれません。



もし、今回はじめて国際的なファーストエイド・ガイドラインの概念に触れて、これまで日本で考えられていた応急手当の範囲を大きく越えた応急処置の考え方を知った方にとっては、G2010版のハートセイバー・ファーストエイドマニュアルから学んでみることをお勧めします。(最新の日本語情報はまだまだ限定的ですので)

多少、変更されたところもありますが、

・気管支拡張剤の使用
・アドレナリン自己注射器の使用
・胸部症状へのアスピリン投与
・止血帯(特に軍用ターニケット)の使用
・低血糖症状への糖分補給

など、既存の日本の応急手当の概念からは驚くようなトピックスを含んだ内容について俯瞰することができると思います。

G2015版のAHAファーストエイドコースができるのは、予定では2016年1月頃(英語版)です。

日本もガイドラインに従ってファーストエイド教育を始めるのかもしれませんが、これまでの内容とはガラリと変わるために、カリキュラム策定には相当時間がかかることが予想されます。またなにより指導員育成がネックとなるのではないかと考えられます。

いままでは、ハートセイバー・ファーストエイドコースは、あくまで米国基準だったため、日本国内での適応が難しい部分がありましたが、今後は、この差はぐっと小さくなります。

今後は、

ファーストエイドを学ぶならハートセイバー・ファーストエイドコースで!

と、強く言える時代になるのではないでしょうか。



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2015年10月18日

AHAガイドライン2015、BLS-HCP成人心停止アルゴリズム解説

AHAガイドライン2015のBLS-HCPアルゴリズム


AHAガイドライン2015の成人BLSアルゴリズムについて解説します。

アルゴリズム図をみていただくとわかるとおり、表面上目立った大きな変更はありません。 (この図はcirculation誌の図表を元にBLS横浜が独自に作成したものです。AHAのG2015ハイライトの暫定日本語訳のものとは表現が異なっています。ご注意ください)

AHAは今回のガイドライン改訂を、新ガイドラインを発表したというよりは、updateという表現をしています。前回のG2010で概ねガイドラインは完成したものとして考え、そこに修正や追加を加えたような感じで捉えたらいいでしょうか。抜本的な見直しではない、ということです。

さて、それでは成人の心停止BLSアルゴリズムを順番に見ていきましょう。


1.安全確認


まずは周囲の安全確認という基本事項があえて明記されるようになりました。これまでヘルスケアプロバイダー向け勧告では不思議と周囲の安全確認ということがアルゴリズムにもコースにもほとんど含まれていませんでした。

一方、ハートセイバーCPR AEDコースでは実技試験のチェック項目にも入っているくらいの大事なポイントだったのですが、あまりに当たり前すぎて省略されていたのかもしれません。今回は、救命の連鎖が病院外と病院内という分け方をされたこととも関係しているものと思われますが、とにかく「周囲の安全ヨシ!」が医療者向けプログラムでも再確認されました。

2.反応確認


2番目のボックスは「大丈夫ですか?」という反応確認です。G2010版では反応確認と併せて呼吸確認をほぼ同時に行うということになっていましたが、今回、扱いが変わりました。

傷病者に反応がないことを確認したら、その時点で「誰か来てください!」と叫ぶことになりました。G2005に戻った感じですね。人が来れば、その人に119番とAEDを頼めばいいですが、誰も来なければ携帯電話等で通報をし、誰かにAED手配を頼むか、自分で取りに行くことになっています。

ガイドライン本文を読むと市民救助者は上記の通りですが、ヘルスケアプロバイダーに関しては少し違うようで、

Healthcare providers should call for nearby help upon finding the victim unresponsive, but it would be practical for a healthcare provider to continue to assess for breathing and pulse simultaneously before fully activating the emergency response system.

と書かれています。「誰か来てください!」と叫ぶまでは市民と同じでいいとして、その後、通報を完了するまでに呼吸と脈拍を評価することが実践的であろう、という扱いになっています。

つまり、結局のところヘルスケアプロバイダーが「誰か!」と叫ぶ以上の通報努力をどのタイミングでするのかが明確ではありません。新しいBLSヘルスケアプロバイダーコースのうえで、どう規定されるのか、またスキルチェックシートでなにが求められるのかが気になるところです。

いずれにしても通報に関しては、これまでは、固定電話が前提で考えられていましたので、その場を離れて電話機まで走ることが想定されていましたが、今回から、携帯電話や無線機、SNSなど、現場にいる状態で、その場から携帯端末で通報を行うスタイルが明確に打ち出されています。

さらにいうと、スマートフォンなどで標準的に使えるスピーカー通話(ハンズフリー通話)のことも念頭に置かれています。つまり、反応がないと判断した時点で、周囲に誰もいなければ、スピーカー通話で119をプッシュし、呼吸確認と脈拍確認を行いつつ、指令員に通報、さらには消防指令と話をしながらもCPRを続けるということが想定されています。

3.呼吸と脈拍を同時に確認する


3つ目のボックスは呼吸と脈拍の評価です。前回のG2010では、反応と呼吸をほぼ同時に見ろと言っていましたが、今回は、1:反応確認、2:呼吸と脈(同時)となり、少し整理された感じです。

前回ガイドラインの反応と呼吸を同時に見ることは現実的に不可能でした。AHAも「ほぼ同時に」という表現を使っており、それでいて、呼吸確認に要する時間を明確に規定していなかったため、やり方には諸説あり、不明確なまま5年が過ぎました。

その点、今回の「呼吸と脈拍」の同時確認はすっきりしています。JRCガイドラインと違って、AHAでは、呼吸確認に頭部後屈あご先挙上法での気道確保を求めていませんから、呼吸確認は胸から腹にかけての動きを「見る」だけでOK。その間に自分の指を傷病者の頸動脈に当てておけば、10秒以内で呼吸と脈拍を同時に無理なく見ることができます。


もし、ボックス2の時点で、携帯端末を持っていないなどの理由で、通報を後回しにした場合でも、CPR開始の手前の時点では、その場を離れて公衆電話に走るなど、救急対応システムの発動(ならびにAED手配)を行う必要があります。

4.CPR開始


3つ目のボックスまでで、「反応なし、呼吸なしor死戦期呼吸、脈なし」であれば、胸骨圧迫から30:2でCPRを開始するというのはこれまでと変わりません。

ただし、質の高いCPRの指標が若干変更されました。

アルゴリズム図には記載されていませんが、変更は下記のとおりです。

 胸骨圧迫
  ・強く・・・少なくとも5cm。ただし6cmを越えないこと
  ・速く・・・100〜120回/分
 
リコイルや圧迫中断を最小限に、人工呼吸に関しては過換気を避けるというのは変わりありません。

この点は、2013年のサイエンスアップデートですでに示されていた点でなにも目新しい話ではありません。G2010でヨーロッパのガイドラインでは、すでに6センチや120回という上限を示していましたが、これが踏襲された形です。

また圧迫の手の位置「胸骨の下半分」という部分も変更ありません。

5.AED


AEDのアルゴリズムについては、なにも変更はありません。



非心停止対応について


3つ目のボックスから左右に別れるところが、今回のガイドライン改訂の要所かなと思います。つまり、反応がないものの、呼吸と脈があった場合(左)、反応と呼吸がなく、脈があった場合(右)です。

これらは、心停止ではありません。

BLSでは心停止ありきで心臓が停まっていることしか考えていないものなのですが、その中でも今回は、心臓が止まっていないケースを2パターンにわたってきちんと考慮している点が、非常に現実的になったように感じています。

特に左の流れ、これが、PEARSファーストエイドの入り口となります。今回のガイドライン改訂で病院内心停止を病院外心停止とは区別する概念が明確化されましたが、院内心停止の多くは心室細動による心臓突然死ではないということが言われています。

予兆のある防ぎ得た死が病院内心停止の特徴。ですから心臓が止まる前に介入しなければならないのです。そういった概念がきちんとBLSにも反映されてきたのは今回のガイドライン改訂の包括的な意味なのかなと思います。

●反応なし+呼吸あり+脈あり


簡単に言えば意識障害の状態です。これまでのヘルスケアプロバイダー向けアルゴリズムには含まれていなかった部分になります。

人の生命を司る、呼吸、循環、神経系のうち、とりあえず呼吸と循環には問題がない。ですから、とりあえずBLSは必要ではない。つまり、1分1秒を争うような緊急事態ではないということです。ですから、救急隊や医師などの専門家に委ねるまでは経過観察を行えばよいということになります。

この場合、原因検索とか全身評価とか難しい話になりがちですが、原点はもっとシンプルです。

BLSプロバイダーとしては、CPRという最後の砦ともいうべき武器を持っています。いまその武器を行使しないのはなぜかというと、意識障害はあるものの、自発呼吸があり、心臓も循環を保てているからです。

そう考えると自ずと何を観察すればいいのかは見えてきます。つまり、呼吸の観察を続けていること、が最優先です。息をしている限り、心臓も動いているからです。もちろん、脈拍をチェックし続けても構いませんが、ABCという人が生きるしくみを考えたら、なにはさておき呼吸確認が大切です。

●反応なし+呼吸なし+脈あり


いわゆる呼吸停止ケースです。対応としては、補助呼吸 Rescue Breathing ということで、ガイドライン2005時代から変わっていません。心臓が動いているから胸骨圧迫は不要。しかし自発呼吸がないから呼吸のみを補助すればいい。具体的には5−6秒に1回の人工呼吸を行います。

呼吸停止ケースで発見できた場合は、いわゆる呼吸原性心停止を早期に発見できたものと考えて下さい。徐脈になっているケースが多いかと思います。

人工呼吸で心筋細胞に酸素が供給されれば、心拍数は戻り、血圧上昇を伴えばやがては自発呼吸の再開し、意識を取り戻す可能性もあります。

しかし、酸素化がうまく行われないと、心拍数は下がっていく可能性もあります。ですから2分毎に脈拍をチェックし、もし10秒以内に確実に脈が触れると確信できる状況でなくなっていたら、循環補助つまり胸骨圧迫も行い、30:2のサイクルで続けます。そしてAEDがあれば装着し、解析結果に委ねます。

ここまでは普通に呼吸停止対応でなにも変わったところはありません。

しかし、G2015で出てきたのがボックスの最後に書かれているナロキソン投与という話です。

これは昨日のブログですでに解説していますので、割愛しますが、米国では呼吸停止ケースというと麻薬(オピオイド)中毒が多いということのようですね。そのため、オピオイド中毒が疑われるケースでは、準備できれば拮抗薬であるナロキソンを自動注射器で注射するということがBLSプロバイダーや市民救助者の処置の中に含まれるようになりました。




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2015年10月17日

AHA-BLS2015の改定 オピオイド中毒による呼吸停止とナロキソン注射

AHAガイドライン2015アップデートにより、BLSの範疇にナロキソン注射というのが新たに登場しました。結論から言えば、日本では無視していいものですので、一般の方は気にしなくていいです。

ただし、AHA版のBLSアルゴリズムの中では言及されているものなので、AHA-BLS教育に携わる人は知っておいたほうがいいでしょう。

これはオピオイド過量摂取、つまり麻薬中毒に関連した話になります。

麻薬を過剰摂取すると、呼吸抑制が起こります。簡単にいうと呼吸が止まります。

この初期状態で傷病者として発見された場合、「意識なし、呼吸なし、脈あり」という状態で認識されます。

BLSアルゴリズムに従えば、この場合は5−6秒に1回の補助呼吸(人工呼吸)をして、2分毎に脈拍チェックをして、救急隊を待つということはG2010のときと変わりありません。

しかし、傷病者が麻薬の常習者だったり、薬物摂取をうかがわせるような状況だった場合、緊急通報とAED手配の他、オピオイドの拮抗薬であるナロキソン自己注射器があれば持ってくるように周りに依頼することが追加されました。そしてAEDの場合と同様、可能になり次第、ナロキソン0.4mgを筋肉注射するということが、BLSアルゴリズムの延長として提示されています。

注射というからには二次救命処置の範疇と考えられますが、AHAガイドラインでは、これはヘルスケアプロバイダーだけではなく、市民救助者にも求めるBLSの範疇というのですから驚きです。

米国では2014年に市民救助者向けのナロキソン自己注射器が米国食品医薬品局(Food and Drug Administration : FDA)により承認されているそうです。

それだけ米国では薬物中毒が日常的だということなんでしょうね。

感染管理で有名なCDC(Centers for Disease Control)でも「市民救助者向けナロキソンプログラムが成功していることを強調している」とのこと。


米国に習い、日本のファーストエイド領域でもエピペンが入ってきました。そこに加えてナロキソン自己注射器も、ということになるのか、というとそういうことはなさそうです。

オピオイド中毒に関しては、ガイドラインの原本ともいうべき国際コンセンサスCoSTR 2015では、ナロキソン投与の効果を認めつつも、少なくともBLS範疇に組み入れることは推奨していません。

当然、日本のガイドラインも同じスタンスです。

このナロキソンの市民による注射は、米国が自国事情に合わせて独自に組み入れたものですので、その米国基準の講習プログラムを日本で展開する際には注意が必要な部分となります。

これまで医療者向けBLS部分では日米で大きな差異はありませんでしたが、今回、各国の独自性が色濃く出てきた印象です。




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2015年10月16日

ガイドライン改訂、ファーストインプレッション

10月15日にAHA版とERC版ガイドライン2015、16日にはJRC版ガイドライン2015が発表になりました。

現在、日本語情報としては、AHA版ガイドラインとJRC版ガイドラインが流れていますが、市民向け救命講習に関わる人は、まずはJRC版ガイドラインをまず読むべきだと思います。

そして医療従事者向け救命処置講習(BLSやACLS)に携わる人は、バックグラウンドにもよりますが、AHAガイドラインを先にチェックしたほうがいいかもしれません。

その他、市民向け救命講習指導員の中でも、とりわけ小児の蘇生に関わる方は、AHAガイドラインにも目を通しておくと良いかと思います。

というのは、やはり今回のガイドライン改訂でも日本版では小児の特異性には目をつむる形で編集されており、これまで以上に成人と小児の差がないような形になっているからです。

それに対して、米国のAHAガイドラインの中では、小児の蘇生アルゴリズムが一人法と二人法に別れるなど、さらに子どもの心停止の特性が強調されています。

人工呼吸の必要性に関しても、

"Strongly reaffirming that compressions and ventilation are needed for pediatric BLS"

と、AHAガイドライン2015アップデート公式ホームページのPBLS解説ページのキーポイントでも示されているくらいです。

このあたりはまたいつかきちんと解説記事を書こうと思っています。



さて、成人に関してですが、AHAガイドライン2015のヘルスケアプロバイダー向けBLS手順で変わった点といえば、表面的な部分では、通報のタイミングが反応確認の後になりました。これはG2005時代に戻ったとも言えますが、その背景には携帯電話の普及が関係しているようです。

そして呼吸確認と脈拍確認を同時に行うことに。これはJRCガイドラインとおなじになったようにも見えますが、JRCガイドラインと違う部分は、頭部後屈顎先挙上で気道確保をした上で呼吸と脈拍を確認するのではないという点です。

つまり、呼吸は目で見て確認すればよく、指は頸動脈へ。側方アプローチで誰にでも無理なく行えます。

成人のBLSについても後日、きちんと解説記事を書く予定です。





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